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地球温暖化は他人事でない=米国は責任の自覚を=ブラジル人社長、米大手に働きかけ=エタノールにも限界あり

2007年3月7日付け

 【ヴェージャ誌一九九五号】ブラジル人で、アルミ精錬で世界トップの米アルコア社のアライン・ベウダ社長は、地球温暖化が深刻な事態へ突入したことで二酸化炭素の削減で米国の陣頭指揮を執る意向を示した。大量の排気ガスを放出する大手九社のトップを招き、同社長は米政府が炭酸ガスの削減目標を設定し、温暖化現象に歯止めをかける提案を行った。地球温暖化を他人ごとのようにせず、大手十社に現実を認識し即時対策に応じるべきだと同社長は檄を飛ばした。ブラジルもエタノールで鬼の首を取ったと思っていると、足をすくわれるという。
 次は地球温暖化に関する同社長の見解である。
 【化石燃料二〇%の削減と温暖化防止】米大統領の化石燃料二〇%削減計画は、米政府にとって温暖化対策に関する初めての行動である。腰を上げただけでもよい。それでどの程度の効果があるかは別問題。大統領の本音は、自動車産業とトウモロコシ生産者への政治的ジェスチュアと見る。大切なのは動き出したということ。
 【大手十社率先の動機】世界各国が温暖化防止に取組んだが、敗退している。異常気象が益々深刻化したことで、大手も立ち上がったもの。米大手が結束すれば、温暖化防止に有効で適格なアイデアが出ると思っている。
 新工場のボイラーが、ガスか石油か電気か知らないのでは設備投資を決められない。政府は、工場稼動後の二酸化炭素の排気量規定を設ける必要がある。規定は厳しい内容でよい。米国にはそれに対応できる技術力があるからだ。
 【炭酸ガスの削減法】先ず炭酸ガス削減量の取引制度を設定する。この制度で一国や一産業部門が放出する炭酸ガスの絶対量は決まる。続いて削減努力をした企業が削減分を売却できる制度をつくる。この方法は硫化ガスと酸性雨で試験済みだし、成果も出ている。この方法を実施すれば、二〇五〇年までに炭酸ガスを五〇%削減できる。これを世界レベルで行えば、必ず結果が出る。
 ビジネスとして原子力発電所の建設も一案である。原発はクリーン・エネルギーを発電するが、核廃棄物をも生み出す。それでも発電所の四〇%が、石炭を焚いているのに較べればまだ良い。原油を採掘した後の空洞に排気ガスを充填する計画もある。しかし、まだ研究中だ。
 【エタノールについて】エタノールは炭酸ガス削減の一方法であって、解決策ではない。エタノールは、工業用燃料として不向きという難点があるからだ。いつエタノールに代わる代替燃料が現れるかは分からない。世界はエタノールの他に、太陽光発電や風力発電、石炭の地下燃焼などが研究されている。
 ブラジルやアフリカのような国で、自動車用燃料としては間に合う。しかし、米国のような大量消費をする先進国に対しては、ブラジルの生産力ではとても追いつかない。エタノールに関するブラジルの優れた技術は認める。だが油断すると、いつ足元をすくわれるか分からないから要注意。
 【ブラジルの経済活性化案(PAC)】ルーラ第一次政権でマクロ経済を秩序立てたことは評価する。第二次政権はミクロ経済の完成にある。ただマクロを低水準に設定したため、ミクロへの乗り換えは微妙である。賢明な経済スタッフの有無が経済活性化成功の鍵になる。
 政策の実施はあわてず、確実に段階を踏むこと。ブラジルの経済成長にはインフラ整備と環境、長期投資への不安という問題がある。数々の不便な法令を制定したため電力の確保ができず、外資の導入がままならない。公共事業計画は遅れ、高価なものになっている点も心配だ。