ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | 実録、偽装誘拐の手口=子を思う親心につけ込む

実録、偽装誘拐の手口=子を思う親心につけ込む

2007年3月2日付け

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二月二十七日】サンパウロ市で偽装誘拐詐欺事件が急増、今年に入り三〇〇〇件以上の被害が続出(本紙二十四日付既報)しているが、偽物と本物の誘拐はどこで見極めをつけるのか? また警察は親の人情を悪用したこの種の犯罪を根絶できないのか? 詐欺犯にまんまと乗せられて、息子を救出するためにサンパウロ市からリオデジャネイロ市まで深夜に車を走らせた母親が今、このテーマに真剣に取り組んでいる。以下はその母親の心情と騒動記(詐欺は結句未遂に終った)である。
 二十四日午前一時半ごろ、英語の教師をしている五十八歳の女性の家の電話が鳴った。応対すると若い男の悲鳴が流れてきた。女性は日頃から知っていた誘拐詐欺だと直観、直ちに電話を切った。しかし電話はしつこく鳴り続けた。女性はついつい電話に出た。以前息子が電撃誘拐に遭って車を盗まれた時、この時間帯に車が発見されたとの通報があったのが頭をよぎった。これが第一の間違いだったと反省している。受話器を外して置くべきだったと後悔している。
 その後の犯人とのやりとりは、冷静に考えると下手な芝居についつい引き込まれたようなものだが、何はともあれ息子の無事を願う気持が先走ったという。犯人は金品を要求したが自宅には何もなかった。すると犯人らは車を売るように指示、ドゥトラ道をリオ市に向けて走るよう命令した。女性は携帯電話で犯人らの指示に従って車を走らせた。
 二十五日朝、リオ市に着いて数軒の自動車販売代理店で換金しようとしたが果たせなかった。犯人らの指示が現金だったためだ。女性はショッピングセンターで携帯電話と充電機を購入したが、その際落ち着かない態度で不審を抱いた店の通報で警官の職務質問にあった。いったんは振り切ったものの取り押さえられ、一部始終を説明した。警官らは女性の家族と連絡を取ったところ、全員無事と判り、詐欺事件は幕となった。