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MST、サンパウロ州の12農場を占拠=CUTが指揮執る=カーニバル休暇の間隙突く=PTサンパウロ州支部も関与

2007年2月20日付け

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十九日】農地占拠運動(MST)メンバーはカーニバルで軍警や農場主連盟が小休止した日曜日の十八日、サンパウロ州九市の農場十二カ所一万五六〇〇ヘクタールへ突然占拠攻勢をかけた。中央労組(CUT)が占拠の指揮を執ってメンバー一〇五〇世帯二八〇〇人を動員し、サンパウロ州西部のポンタウ・ダ・パラナパネーマ地方とアウタ・パウリスタ地方を襲った。メンバーの中、八〇〇人は農村運動のプロであった。占拠は二十日も続行され、アラサトゥーバ地方で行われた。MSTがキャンプを設営した正午、軍警はまだ占拠を知らなかった。
 新たな占拠攻勢は、MSTとCUTの合同奇襲作戦であった。これまでの単発的な占拠と異なり、労組並みの組織的な活動にMSTをテコ入れするらしい。サンパウロ州労働者党(PT)配下の労組がMSTを組織的かつ大規模な社会活動を起させ、占拠が政治的様相を見せたのは初めてだ。
 MSTリーダーのライニャ氏は、建前として占拠目的を農地改革の迅速化とする声明を発表した。農村地域のサトウキビ栽培が本格化するに伴う社会問題の発生に対処するため、社会の関心をひいたのだという。休耕地を認めないMSTは、未栽培地を占拠の対象に考えているらしい。
 アンドラジーナやアラサトゥーバ、ジャーレス地方には広範囲にわたって休耕地があり、連邦地裁の判断を待っている。同地方には先々代からの先取特権で入植した農場が多い。警察も行政機関もなかった時代、開拓者が人跡未踏の密林に挑んで開いた農地の管理占有権をどう判断するかだ。
 時代が変わり地域社会の秩序が整った現在、MSTとCUTなどその共鳴者が書類の不備を理由に農地の接収と占拠が許されるのかどうかが、審理の対象となっている。休耕という生産技術が分からない三者には、法律が定めた生産地や非生産地の区別が困難らしい。農地改革院は非生産地の証明が不可能という。
 PTサンパウロ州支部の関与が問題を複雑にしそうだ。MSTの占拠活動を組織化したCUTの背後に、PTサンパウロ州支部が控えているからだ。占拠は緻密な前調査と治安機関の虚を突いて周到に行われた。占拠された農場は柵や正門を踏み倒され、MSTがイナゴのように押し寄せた。ほとんどの農場主は、カーニバル休暇をとって不在であった。
 農場主連盟は、ルーラ大統領とセーラサンパウロ州知事(ブラジル民主社会党=PSDB)に問題の解決を一任したようだ。サトウキビ生産地は収穫の機械化により収穫請負人の手間が不要となり、失業者の増加とともにMSTへ合流する者が顕著である。占拠地には失業者を満載したトラックやバスが、次々と到着した。
 エタノール景気で沸き立つサトウキビ地帯は作付けが激増し、収穫請負人もブラジル全土から多数かけつけ急増している。あぶれた請負人がMSTに加わり、農場荒らしはお祭り気分である。ジャシポラン郡の国道沿いには、三〇キロメートルにわたってMSTの掘っ立て小屋が軒を連ね、スナックあり風俗店ありの異様な雰囲気となった。