2007年2月10日付け
秋田県に阿仁という町がある。山に入り狩猟を生業(なりわい)としたマタギが暮らしていたところで今は観光地として知られる。古い新聞の切り抜きによると、ここには「クマ牧場」があり100頭ばかりいて冬眠させたりしているそうだ。恐らく―今ごろはすやすやと眠りについているのだろうが、牧場の方も寝床にワラを敷いたりといろいろ大変らしい▼4月まで眠るそうだが、不思議なことにこの期間は何にも食べない。水も飲まない。それに―うんこもおしっこもしない。獣医によると、腎臓で尿はつくるけれども、それを排泄しないで再利用するらしい。そんな可愛げのあるツキノワグマなのに近ごろは人を襲ったりもして有害動物になってしまった▼ここ数年、クマによる被害が増えているのは間違いない。そんなこともあって有害駆除でクマを仕留めるのが盛んになっている。昨年は過去最高の4600頭ものツノワグマが銃殺された。実数は5000頭の説もあるが、この大量駆除に警告を発する専門家も多い。学者らによると、4600頭は推定生息数の3分の1に相当すると指摘する。もし、この数字が真実であれば―いかになんでも殺し過ぎではないか▼確かに、クマが人家に近づき村人を襲ったりの事件は多い。だが、これも山に食糧となる樹木が少なくなり里へ下りなければ生きるのが難しくなったクマの苦しい「知恵」と受け止めたい。いわば人間が木々を伐採し、杉や松を植林して木の実などをつける樹木が少なくなった「人災」と見ていいのではないか。そうでないと、山に棲むツキノワグマがかわいそうすぎる。 (遯)