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変質し始めた左翼政権=専制政治を導入=伯にも伝染する恐れ=チャベス礼賛のPT

2007年2月7日付け

 【エスタード・デ・サンパウロ紙一月二十二日】ラテンアメリカに台頭してきた左翼政権は、二十世紀初期の社会主義専制政治の様相を呈してきたと、リオ・グランデ・ド・スル連邦大学哲学科のローゼンフィルド教授が警告した。違うのは専制政治の導入である。ルーラ大統領の労働者党(PT)政権も、この専制民主主義に免疫性があるとはいえず、いつPT政権に伝染するか分からない。この流れに合流を考えている幹部党員は、かなりいる。PTは傾向として、チャベスの専制手法礼賛である。中にはハッキリそれを表明する者さえいる。
 以下は同教授の警告である。ベネズエラのチャベス大統領の政治手法をモデルとして参考にするという流れが、PT内へ浸透しつつある。ボリビアのエヴォ・モラレス大統領の先住民を中心とする社会主義運動にも、PT党員は拍手を送っている。
 モラレス政権がペトロブラスに対して採った国営化措置を妥当とするPT幹部党員さえいる。まるでブラジルの国益など彼等にとって二の次らしい。PT党員はいったいブラジル人なのかボリビア人なのか分からない。
 最近のことだが、PT元党首のマルコ・A・ガルシア氏は、あからさまにチャベス大統領の政権奪取が民主政治の真骨頂だとベタ誉めにした。PT党員は、専制政治をユートピア再現の一面だという。
 今ラテンアメリカで起きていることは、左翼政権の中でも一部に過ぎない。ブラジルもPTの横暴を許すなら、その一部に含まれることとなりそうだ。ブラジルは試されている。
 チャベス大統領とモラレス大統領の共演外交は、その仮面を剥いで正体を明かす必要がある。専制政治の頂に立てば、教祖的な振る舞いが許される。国民の上に絶対権を振るって支配する。政敵は帝国主義者のレッテルを貼って排除する。チャベス大統領の言葉でいうなら、大統領は正邪の基準である。
 エクアドルのコレア大統領もチャベス教の信徒になりつつある。ニカラグアのオルテガ大統領も、チャベス教祖へ弟子入りを伺っている。専制民主主義を導入する方法はいくらでもある。専制政治を取り入れるには、極右でも極左でもよいのだ。
 専制政治の導入は、ユートピア実現への一過程らしい。ラテンアメリカにおける左傾化の第一歩は大衆迎合である。次に生活扶助金という喜捨をばら撒くこと。二十世紀の社会主義は暴力革命で達成したが、二十一世紀はアメのばら撒きで完成するらしい。
 ルーラ大統領にも専制志向はあった。大統領が十二月二十七日、労組との間で合意した最低賃金三八〇レアルは、国民の代表が妥当と認めたことであり神聖な決断だと妙な発言をした。議会は立法化せよという。財務相は、社会保障制度が破たんすると猛反対した。大統領と労組の合意は、国民の意向であり法律も同然であると。ルーラ流専制政治の兆しではないか。
 国際共産主義には二つの流れがあった。一は暴力を是認したレーニンの流れで、既存の組織を破壊し新たな組織を構築させた。民主政治のなかった国では、この流れが容易に導入できた。二のグラームスの流れは、市場経済を認め国が統制した。産業の戦略的部門だけは国営化し、ある程度の民主政治が根付いていた国へ適用された。
 チャベス大統領の場合、司法府を大統領支配下に置き、立法府は行政府の支配下に置いた。そして専制政治を合法化し、続いて報道管制を敷いた。スターリンによるソ連の書記長制度を導入し、将来はチャベス大統領の一党独裁制にするつもりらしい。
 チャベス教の信徒には、この専制民主政治が新しい社会主義のマニュアルになっているらしい。大統領が選出すべき国会議員を国民に指示し、議会を構成する。従わないとそれなりの報復がある。これで国会は骨抜きになるか、欺まんの議会が出来上がる。