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下院議長にキナリア下議=現職との接戦制す=連立与党の2分を暗示=上院議長は現職留任

2007年2月3日付け

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二日】アルリンド・キナリア下議(労働者党=PT)は一日、下院議長選で二六一票を獲得し、勝利を治めた。ルーラ大統領が推薦したレベロ前議長(ブラジル共産党=PCdoB)は、二四三票と惜しくも二位に留まった。しかし、両候補の得票数が予想とは違い僅差であったことは、連立与党が二分していることを暗示した。与党が議長席を獲得したが、候補二人を擁立し与党陣営を二分させたことは、大統領の求心力が連立同盟へ移ったといえそうだ。上院では予想通りにカリェイロス現議長が留任を決めた。
 キナリア下議は投票に先立つ方針演説で、PTと連立与党を巻き込んだ疑惑騒ぎに幕を引く意向を表明した。議会を騒がせた告発攻勢は、議員同士のいいがかりであって根拠のない話として一件落着という。
 計算だけで見るなら与党連合は十一党からなり、下院五一三議席の三二一議席を占める。これが一枚岩なら、議会運営もPAC(経済活性化法案)もスンナリ行く。しかし、レベロ現議長の留任を信じていた陣営と白票を投じた六十四下議は、離反するらしい。
 多くの一年生議員を迎えて発足した第五十三回下院議会は二月一日、微妙な雰囲気で出発した。新議会は、小切手税の期限延長やPAC成功の可否がかかるDRU(予算法の枠外歳出)の連邦令補足案の承認で宿題の山を抱えている。
 野党候補のフルイチ下議(ブラジル民主社会党=PSDB)は、予想以下の九八票に留まり一次選で敗退した。同候補が候補を降りて支持票をレベロ候補へ回し、現議長を留任させる案もあったが実現しなかった。野党PSDBは、キナリア下議のシナリオ通り第一副議長に甘んじるようだ。
 ルーラ大統領は、PTから出る新下院議長が裏金疑惑の古傷を癒す赤チンになると安堵した。キナリア陣営とレベロ陣営が覇を競った与党のベース調整で、大統領は疲れたらしい。大統領の関心事は、議長に誰がなるかではなく議長が持つ権限だという。
 大統領と党の間には微妙なズレがあった。キナリア議長が誕生しても組閣に関する権限委譲はないし、党の左傾化は許さない意向を大統領は示した。
 組閣は連立政権結束の鍵らしい。議長選で敗退したレベロ陣営の他に、ゴーメス下議も選挙結果に不快感を表した。キナリア下議の担ぎ出しは、連立政権を二分するオーケストラの指揮者が考え出した最低のアイデアで、党内左派の追放だと批判した。
 第二次ルーラ政権は、PTとブラジル民主運動党(PMDB)が二本柱になる兆しがミエミエだ。PMDB支援が形勢を支配したのは、キナリア下議だけでなく、カリェイロス上院議長の留任にも及んだ。そのため共産主義者と社会主義者は政府内での影が薄くなった。大統領の弁舌による神通力も弱まった。
 議員の党移籍は、役職配分前の屋台の叩き売りのようだ。議会開会の初日、下議十八人がすでに党を移動。八人は野党を去り与党へ、十人は連立与党でエサのよいところを物色中だ。党移籍が自由な国家ダンスパーティは、告発攻勢で一時下火であった。