2007年1月27日付け
ユングの大家として知られ評論家でもあった河合隼雄氏が文化庁長官に就任し活躍していたのに―病に倒れ勇退したのは真に惜しい。だが、河合氏は長官に就任すると、子どもの頃に学校や両親から教えてもらった童謡や唱歌をみんなで歌おうと発案した「日本の歌百選」の選定が終わり公表へ漕ぎ着けることができたのは喜ばしい▼選考委員に選ばれたのは、童謡コンサ―ト2000回を超す由紀さおり、安田祥子姉妹を始めとする専門家たちだったが「あの歌はとってもいい」「いや、あの童謡のメロディ、それに詩が素晴らしい」の声が次々に出てきて結局は、100曲の約束だったのに1曲多くなり101曲になったそうな。まあ、これぐらいは河合長官も大目に見て許して呉れるだろう▼選ばれたのは「蛍の光」「仰げば尊し」「赤とんぼ」などであり「背くらべ」「こいのぼり」も入っている。戦後に坂本九が歌って大流行した「上を向いて歩こう」も選ばれたらしいが―これも嬉しい。確か作曲は故・中村八大で作詞は永六輔だったけれども、あの明るく朗らかな曲の流れと詩のよさが堪らない▼明治維新を迎えると西洋に学べとばかり、日本の音楽(邦楽)を捨ててしまったのはいささか残念ながら童謡や唱歌の力はやはり凄い。古稀や喜寿になっても忘れないし、秋の夕暮れともなれば「赤とんぼ」のメロディが自然に流れ出る。河合氏の童謡への想いも、文部省のお役人からはなかなか生まれない発想であろうし、民間人出身の文化庁長官としての功績として記憶に留めたい。さあ―コロニアでも「童謡を―」である。 (遯)