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■記者の眼■――――帰日逃亡する日本人?!

2007年1月20日付け

 日本のニュースは、「静岡県浜松市の女子高生ひき逃げ事件」で初めての代理処罰の起訴が決まった件であふれている。NHKはもちろん各民放報道番組、各全国紙もこぞってトップや準トップ扱いで大々的に報じている。
 〇五年末以来、この件を追い続けている本紙にとってはいろいろな意味で感慨深い。その思いの中には実は、身につまされるような気分もある。
 大量に流れている日本のニュース中の被疑者はみな「ブラジル人」「日系ブラジル人」であり、日本政府はブラジル政府に対して「逃げ得は許さない」という〃正義〃を突きつける構図として、一方的に描かれているニュアンスが強い。
 もちろん、代理処罰は必要であり、今後の日伯関係を考えたとき、帰伯逃亡はあってはならないことに違いない。
 しかし、相手に向けたはずの法律という刃物は、自らに跳ね返ることがある。この件の報道が増えてくると、日系社会内には「日本人はブラジル人ばかり悪者にしようとしている」という反発も徐々に生まれつつようにも見える。
 例えば、「十五年ぐらい前にサッカー留学生がサンパウロ市で交通事故を起こしてブラジル人をひき殺し、日本へ逃げた」とか「駐在員がカステロ・ブランコ街道で交通事故を起こしてひき殺したが〃弁護士の助言〃で、日本へさっさと帰国した」など、次々に噂とも事実も言い難い事例を連絡してくる人の存在だ。
 もちろん、新来日本人だけでなく移住者自身にも苦い事例はあるに違いない。
 日本でデカセギが急激に増えたために、日本国内ではあっという間に注目を浴びるようになった。しかし、実はブラジルでは同じようなことを日本人自身がしていた…。
 いずれ、この件がブラジルのマスコミに注目されるようになれば、この点を突かれるのは間違いない。今までは、ブラジル人の被害者は泣き寝入りして、日本政府に訴えることはなかった。ただし、今後は違うかもしれない。
 百周年を目前に、もしかしたら〃パンドラの箱〃を開いてしまったのかーーとの戸惑いすら感じる。
 当たり前の話だが、ブラジルでひき逃げ事件を起こして日本に逃げたら、同様に追求されるだろう。我々、海外在住者は日本を祖国としながらも、両方の立場にたっていることを痛感する。 (深)