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身近なアマゾン(25)――真の理解のために=コロンビアとの国境近くで=知人の訃報をきく悲哀

2007年1月19日付け

 □夜空を見上げて月に想う〔ネグロ川上流のインディオ部落にて〕(1)
 現在、アマゾン川支流ネグロ川上流のまた支流のイサナ川に来ている。もう後しばらく上流にゆけば、コロンビアに届いてしまう地域だ。
 ヨーロッパ人は別として、恐らく日本人でこの地域に入ってきた探検採集人は私が初めてだろうと思い〔とうとうここまでやって来たか〕という感慨もある。
 赤道真下で太陽光線にジリジリ焼かれ、その上に真っ黒で不気味な流れの川幅二~三キロに及ぶ川、そんな地域のインディオ集落で数日を過ごして来た。勿論、この度は私一人と案内のインディオの友達だけ。長かったアマゾン地方の雨季も終わりかけて、マナウスでも採集された魚が、食用、観賞用ともに入荷が始まっているようだ。
 日本の不況というのか、世界不況というのか、なかなか活況が戻ってこないのは、アマゾンの大都市マナウスとて同じことのようで、観賞魚業界に他業種からの参入者が増加したことによっても、過当競争になって元気が戻らない一因になっているのかもしれない。
 そんな折、マナウスの友人のシッパー(輸出業者)のファームで偶然会った、同業の知人から、緑書房発行『フィッシュマガジン』の先代編集長・鈴木茂さんの訃報を聞いた。先代編集長とは面識はなかったが、是非一度は会って話してみたい、と思っていた。たしか筆者より五年程若かった記憶がある。まだ四十歳くらいだろうと記憶している。
 筆者が初めて同誌に、ブラジルからダイレクトに寄稿した採集記を、予告なく突然数ページを割いてグラビア入りで特集掲載してくれたのが鈴木さんだった。彼の存在がなければ、私の文章が同誌に掲載されることもなかったわけで、いつか会って、その感謝の気持ちを伝えたい、と思い続けていた。今となっては不義理をしたように感じている。
 このような場所(アマゾンの最山奥)で、このような形で、肉親や知人の訃報に接するのは、仕事柄仕方がないのかもしれないが、その都度いつも悲哀を噛み締めている。
 話は飛躍するが、以前とても元気だった私の父は、私が日本に帰国しようと乗った飛行機がサンパウロを飛び立った後、突然持病の大動脈瘤(十五年前、一度破裂して、元気になっていた)が突然、再度破裂し、私の乗った飛行機が成田に着くちょっと前に亡くなっていた。
 訃報を迎えに来てくれた輸入業者の友人から聞き、成田から家に着くまでの時間、視野狭搾のような状態になってしまって、周囲の景色がぼやけて、良く見えなかったことを今でも覚えている。新幹線の車内で、誰か女の人が〔今日の富士山はきれいねー〕と言っていたのが今でも脳裏に焼き付いている。潜在的にそれほどショックを受けていたのだろう。
 また私の人生でもっともお世話になったと思っている女房の叔父は、私がアレンカーというアマゾン中流の町から、一週間の予定でディスカスという魚を採りに奥地に入っている間に、突然亡くなった。山から出て来て、ディスカスが沢山採れて、嬉しくて嬉しくて、それをサンパウロの女房に報告しようと思って電話をしたところ、女房の口からその訃報に接した。その場で腰が抜けてしまって、暫く立てなかったのを覚えている。
 女房は、その後半年、自律神経が狂ってしまって、物が食べられなくなったほどだった。医者を三カ所、検査を数回、転々としたが、原因が分からず、最後の四人目のお医者さんが原因を突き止めてくれた。自律神経失調症だった、今は元気である。つづく          (松栄孝)

身近なアマゾン(1)――真の理解のために=20年間の自然増=6千万人はどこへ?=流入先の自然を汚染
身近なアマゾン(2)――真の理解のために=無垢なインディオ部落に=ガリンペイロが入れば…
身近なアマゾン(3)――真の理解のために=ガリンペイロの鉄則=「集めたキンのことは人に話すな」
身近なアマゾン(4)――真の理解のために=カブトムシ、夜の採集=手伝ってくれたインディオ
身近なアマゾン(5)――真の理解のために=先進地域の医療分野に貢献=略奪され恵まれぬインディオ
身近なアマゾン(6)――真の理解のために=元来マラリアはなかった=輝く清流に蚊生息できず
身近なアマゾン(7)――真の理解のために=インディオの種族滅びたら=言葉も自動的に消滅?
身近なアマゾン(8)――真の理解のために=同化拒むインディオも=未だ名に「ルイス」や「ロベルト」つけぬ
身近なアマゾン(9)――真の理解のために=南米大陸の三寒四温=一日の中に〝四季〟が
身近なアマゾン(10)――真の理解のために=アマゾンで凍える?=雨季と乾季に〝四季〟感じ
身近なアマゾン(11)――真の理解のために=ペルー国境を行く=アマゾン支流最深部へ
身近なアマゾン(12)――真の理解のために=放置、トランスアマゾニカ=自然保護?改修資金不足?
身近なアマゾン(13)――真の理解のために=クルゼイロ=アクレ州の小川で=狙う未知の魚は採れず
身近なアマゾン(14)――真の理解のために=散々だった夜の魚採集=「女装の麗人」に遭遇、逃げる
身近なアマゾン(15)――真の理解のために=眩しい町サンタレン=タパジョス川 不思議なほど透明
身近なアマゾン(16)――真の理解のために=私有地的に土地占有=貴重な鉱物資源確保目的で
身近なアマゾン(17)――真の理解のために=近年気候変異激しく=東北地方、雨季の季節に誤差
身近なアマゾン(18)――真の理解のために=ピラニアよりも獰猛=サンフランシスコ川=悪食ピランベーバ

身近なアマゾン(19)――真の理解のために=異臭発しても観賞魚=円盤型、その名の意味は?
身近なアマゾン(20)――真の理解のために=ディスカスの自衛方法=筆者の仮説=「あの異臭ではないか」
身近なアマゾン(21)――真の理解のために=タパジョス川の上流に=今は少ない秘境地帯
身近なアマゾン(22)――真の理解のために=ゴールドラッシュの終り=河川汚染もなくなった
身近なアマゾン(23)――真の理解のために=環境破壊を防ぐ行動=国際世論の高まりのなかで
身近なアマゾン(24)――真の理解のために=乱開発された土地に大豆=栽培の競合もつづく