2007年1月17日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙十二月十八日】米国不動産業界の覇者サム・ゼル氏が十七日、次の投資国ブラジルへ白羽の矢を立て来伯した。同氏は自社エクアイティ・オフィスを三六〇億ドルで売却し、翌日には極寒のシカゴから酷暑のリオデジャネイロへ到着。空港から合弁先のBracorへ直行の強行軍。
ジーンズに野球帽の出で立ちは、事業家というよりもセールスマンである。同氏の起業家精神は、学生時代に始まる。銀行から融資を受けて、学生用の下宿を始めたのが第一歩である。不動産業で飛躍したのは八〇年代、米国の不動産が暴落したとき復活を信じて買いに入ったことだ。
ブラジルの市場調査は、七年前から行っていた。調査の結果をテキラ効果と名づけ、ブラジルはメキシコの跡を追随すると見た。この見方に従えば、ブラジルへの投資は時季を得ている。同氏にとってブラジルの魅力とは何か。ブラジルが有望と認められるのは、一億八〇〇〇万の人口と豊かな資産である。
ルーラ政権が、社会政策で左翼政治を、経済政策で右翼政治を行っていることは悪くない。投資の背景として理想的である。
同氏は合弁先としてコンドミニアムのアルファ・ヴィレ、ショッピング・センターのEcisa、工場施設のBracor、マンションのGafisaなどへ資本参加した。
投資国としての米国も悪くないが、ブラジルは新興国だから投資の回転も回収も早い。ブラジルの生産部門への直接投資が減少したというが、それはリスクが原因ではない。原因は生産部門の回収速度だ。
それから国際金融市場では、豊かな資金が投資先を探している。資金は、サウジ・アラビアの原油暴騰によるオイル・ダラーとオーストラリアの鉄鉱石売上金が、だぶついている。ブラジル人は、この事実を見逃してはいけない。