2007年1月16日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙十五日】十二日に起きた地下鉄四号線工事現場の陥没事故で、現場を視察したセーラサンパウロ州知事(ブラジル民主社会党=PSDB)は十四日、陥没に呑み込まれたマイクロバスの生存者救出はほぼ不可能だと述べた。昼夜突貫作業で救出に当たった消防隊は十四日、事故から五五時間後、土中に埋もれた車両を発見したが、さらなる土砂崩れが掘り出しをさえぎった。車両の周辺は地盤が軟弱で、しかも鋼鉄ケーブルの下に閉じ込められた。バスには乗客四人と運転手が乗っていたらしい。事故に巻き込まれた犠牲者は、合計六人とみられている。
陥没現場は二次災害の危険性があるため、さらに広範囲を掘削することでマイクロバスの救出作業は一旦打ち切り、十五日早朝に掘り出すことになった。路面が一部陥没したカプリ通りを走行中の同車両は、一〇〇メートルにわたり転がり落ちたことになる。
陥没は十二日午後三時、地割れと地盤沈下とともに始まった。近辺走行中の同車両が落ち、続いて駐車中のダンプカー六台と乗用車四台も転落した。救出作業は、消防隊により地下と地上で行われている。二次災害の危険性がある地上には、訓練を受けた救出特殊要員七〇人が投入された。
現場周辺で作業中のダンプカー一四〇台や付近のマンションなど一三二世帯の住民は、直ちに退避した。建築責任者や現場監督が事後策に狼狽するなか、犠牲者の遺族は救出作業の遅れに苛立ちを見せ、一触即発の雰囲気に包まれた。マイクロバスが落ちた場所の上には、ダンプカー三台が折り重なって落ちている。
事故原因は、地盤が軟弱なマージナル・ピニェイロス地域の事前措置としての、数々の技術的ミスが憶測されている。特にトンネルの中の排水作業を行った付近にクレーンと資材廃材の取り出し口を設置したことが指摘された。航空事故と同じように工事に伴う事故は複数のミスが重複するもの。一つのミスだけで大事故は起きないと専門家はいう。
クレーンの下部に当たるピニェイロス駅構内の天井でヒビが生じたことを、現場要員が事故前日に上司へ報告したのに何ら手が打たれなかったのも、業務上過失に当たると地質学の専門家はいう。ピニェイロス川付近は岩盤直上に砂と粘土の層があり、付近の開発で層が変化する。それが地下鉄の通路と一致したのも一因とされる。
クレーンの下には地下一八メートルの基礎を据えたというが、基礎の下が湿地であることを知らなかったようだ。無理に設置したクレーンが付近の地盤をずらせ、陥没の前段階を促進していた。クレーンの一方側の陥没がそれを物語る。これらは事前予測が可能なことであり、不可抗力の突発事故ではないと糾弾。
地下鉄工事の請負企業連合は、次のような釈明書を発表した。雨季に入る前は、地下の湧き水が予想以下で安心していた。その後連日予想外の降雨で地盤が軟化。地層から湧き出る地下水が激増し、排水作業が間に合わなかった予測不可能な自然現象とした。
米国では地下鉄工事で犠牲者を出す事故は、一〇〇年前で終了したと外紙が報じた。地下鉄工事の事故には、多くの災害記録があり事前防止は可能なはずとみている。