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活動広げるイグアス太鼓工房=二尺の大太鼓がブラジルに=伯各地で太鼓指導も

2007年1月12日付け

 「本物の和太鼓の音がします」と胸を張るのは、日本式の和太鼓を製造するイグアス太鼓工房(澤崎琢磨代表)の広報担当、澤村壱番さん(40、高知県出身)だ。同工房産はこれでブラジル内五つ、サンパウロ州内では三つになった。
 正規の製造サイズでは同工房最大となる二尺(約六十センチ)の長胴太鼓が八日、コチア市の杓田美代子さん(63)自宅に届けられ、家族全員が見守る中、澤崎代表による試し打ちが披露された。
 子供たちは目を輝かせ、好奇心いっぱいにのぞき込んでいた。今回初めて、工房で太鼓の引き渡しに立ち会った大野幸司さん(16、パラグアイ日系三世)は、「この子たちが、僕のように太鼓を叩くようになるのかなと思ってうれしかった」とふりかえる。工房の手伝いをしつつ、本人も太鼓を習っている。
 杓田さんは「家に太鼓があれば、孫たちに日常的に親しんでもらえると思って」。昨年九月に同工房の飾り太鼓を購入したが、三人の孫がより日本文化に触れて関心を持ってもらいたいと、大太鼓の購入に踏み切った。
 「ぜひ(孫が)太鼓を習いに行ってほしい」と願いを込める。せっかく購入した二尺太鼓。「うちまで取りに来ていただけるのでしたら、必要な機会に貸し出してもいい」という。
 一方、澤崎代表(32)は「あちこち指導に飛び回っていそがしい」と太鼓ブームを喜ぶ。パラグアイ国内ではイグアス、ラパス。ブラジルでもサンタカタンリーナ州サンジョアキン近郊などでも教えた。特に、ベレンでは移民八十周年に向けて年に一回指導に訪れている。
 同地で太鼓の生産が始まったのは二〇〇三年。太鼓作りの指導者が日本から同地を訪問して技術を伝えたことを機に始まった。石井吉信さん(現工房長)を中心に、モノ作りに携わってきた面々が工房を設立。
 原木と皮をパラグアイ国内で調達し、三、四年かけて自然乾燥させる。皮を張るのは注文があってからだ。「日本から取り寄せるよりも値段は三分の一以下です」。今回の二尺太鼓は四千ドル。澤崎さんは「日本でケヤキの太鼓は二百万円する」という。
 これまでに、ブラジルではサンパウロ、ベレンなどに五つ、アルゼンチンに四つ、日本にも二つほどが販売されている。
 その質は、昨年の移住七十周年祭典で民族歌舞団「荒馬座」の演奏のプロが「叩く感じが日本のものと遜色ない」と話すほど。
 昨年八月には扇千景参議院議長に、同十一月には同地を訪問された秋篠宮さまにも献上した。
 澤村さんは「日本からきたお客さんに太鼓を買ってほしい」とも考えている。
 ブラジルでの太鼓ブームを追い風に南米各国での販売を始め、日本への逆輸出や、太鼓のグローバル化での世界への進出も視野に入れ活動の場を広げている。
 問い合わせはイグアス太鼓工房(パラグアイ国番号=595・632・20・267)まで。