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亜、伯をWTOへ提訴=事前の打診もなく=リジン輸入課徴金は不当=不可解な亜国流交渉術

2007年1月6日付け

 【エスタード・デ・サンパウロ紙一月五日】アルゼンチン政府はメルコスル首脳会議を二週間後に控えた四日、ブラジル政府が課しているボトル用リジンの輸入課徴金を不当として世界貿易機関(WTO)へ提訴した。とかく足並みの揃わないメルコスル(南米南部共同市場)であるが、隣国政府による火に油を注ぐ突飛な行動に政府関係者はあ然とした。提訴内容はメルコスル首脳会議で解決できるものであり、事前の打診もなく直接行動に出たという、首脳会議に水を差すアルゼンチン政府の思惑が懸念されている。政府は、輸入課徴金を廃止する意向がないことを正式に回答した。
 汚れた服は家の中で洗えという格言に従えば、アルゼンチンは服をいきなり外へ持ち出し、言語道断といえそうだ。隣国は亜国流交渉術だという。ブラジルの出方次第では、WTO提訴を引っ込めてもよいというニュアンスもある。
 リオデジャネイロ市で十八日に開催予定のメルコスル首脳会議を控え、ブラジル政府は裏をかかれた思いだ。首脳会議で主導権を狙う隣国は、かえって不利な立場へ追い込まれたというのが外務省の見方だ。
 ベネズエラの加盟でメルコスルの骨格が形成されつつある時、アルゼンチンの突飛な行動は墓穴を掘るものとも言える。キルチネル亜大統領は、メルコスルの完成よりも自国の利益を優先し、敵対関係も辞さない様子である。
 隣国の奇怪な政策は、ブラジル製の家電製品に対するセーフガード(輸入制限)方式の適用だ。さらにセーフガード方式をメルコスル市場へも定着させた。それがいつも首脳会議直前に突然宣言し、ブラジル政府を面食らわせた。リジンの課徴金は二月の定例会議で打ち合わせ予定であったのに、首脳会議の直前にWTOへ持ち込んだのだ。
 一方、亜政府はWTO対決が本意でないことをほのめかしている。過去に伯亜両国は二度、WTOで争った。メルコスル協定にはダンピング規定がない。ブラジルが見なすダンピングについて隣国は、異議ありとして事前打診をしなかったという。
 アルゼンチンでは米系ヴォリジアン社が、リジンを市場価格の半額で輸出していた。ブラジルのリジン生産企業で伊系M&Gが異議を申し立て、政府は亜リジンをダンピングと見なし課徴金を課した。さらにヴォリジアン米国本社は、輸出先国によりダンピングを使い分けていたことも判明。亜政府はそれを知らなかった。
 メルコスルの結束は、政治面重視のブラジルと経済面重視のアルゼンチンの間で歩調が合わない。ブラジルは譲歩に次ぐ譲歩を重ね、隣国の経済回復に協力したつもりだが、共同市場の結束には程遠い。亜交渉術によれば、まず石を投げつけて傷を負わせ、それから話し合いに入る。懐中には第二、第三の石が、用意してあるかも知れない。
 メルコスル共同市場は、関税協定締結の目途もたたぬうちに第二期目に入ったらしい。メルコスル自由貿易市場は、夢のまた夢といえそうだ。加盟国は圏内の調整規定としてのメルコスル協定を全く信用していない。だからWTOへ問題を持ち込むのではないか。