2007年1月1日付け
一世の高齢化はどんどん進んでいる。戦後移民の代表格であるコチア青年ですら、還暦よりもはるかに古希(70歳)の方が多い時代だ。いずれ喜寿(77歳)、傘寿(80歳)、米寿(88歳)、卒寿(90歳)、白寿(99歳)と進んでいくことは間違いない。コロニア最高齢は浅見重平さんの百八歳だが、それを目指して次々と〃新人〃が百歳を超え、本紙調査では六十人以上となっている。そこでニッケイ新聞では、理想的な高齢者の生活をおくるための知恵を見つけるべく、高齢者介護を専門とする心理士の中川クラーラさんや栄養士のエレーナ・ユカリ・アダチさん、福祉専門家の高橋久子さんと五十嵐節子さんに話を聞いた。
老化は自然な現象
老いとは、何らかの形で身体が生活についてゆけない状態をいう。
現在の自分の姿に対し、「昔はこんなんじゃなかった」と現実の自分から逃避するケースも少なくない。
「自分の姿を人にみせたくないと途方にくれる」「外出を避けるようになる」「寝たきりになる」といったケース。
高橋さんは「生活する意欲の喪失が老化を早める」と断言している。
社会の動きを把握することはとても大事なこと。一人で家にいては刺激も少ない。
まず、自分が楽しいと思って続けられることを見つけようと心掛けることが必要だ。
五十嵐さんは、「人間の体は多くの細胞から成り立っているため、この細胞そのものに老化としての現象が現れてくるのは自然なこと」と述べている。
さらに、老化の症状や生理機能の衰える速度は人それぞれ違うもの。年齢や男女によって個人差も大きい。
「老化現象の進行速度を遅くすることは可能である」と五十嵐さんはいう。
そこで高齢者にとって最も大切なことは何か。
答えは簡単。「身体」も「精神」も前向きにし、病気を起さない精神を持つこと。
老いるということを「自然なこと」と受け止めて、健康に老いることに努めることが高齢者には求められる。
居場所や役割を見つける
中川さんは、老化のスピードを遅くする方法の一つとして「社会での自分の〃役割〃を見つけること」を挙げている。
高齢者でも、ボランティア活動や老人会に参加するなど、自分の持つ可能性を存分に発揮できる場所は数多い。
自分の趣味を活かし、社会で十分に実力を発揮できる最適な場所を見つけよう。
また、他の高齢者が社会で頑張って活躍する姿を見て、「私でもできる」と励まされるものも少なくない。
「自信を持つ」ということは、高齢者にとって意欲向上のうえで、なにものにもまさるもの。何らかの活動を行おうという姿勢を持つことが重要だ。
まずは、「自分で生活環境を変える努力をすることから始めましょう」と呼びかけている。
他には、「いつまでも健康体でいたい」――。といって、急にジョキングや水泳、自転車など激しいスポーツを始める人も少なくないだろう。
しかし、いくら元気な人でも、「下手に頑張ると大変なことになり、誤った運動法で下手に頑張りすぎると、心臓に過度な負担がかかり、心臓発作や心筋梗塞を引き起こしてしまう恐れがある」と高橋さんは述べている。
「転倒」―「骨折」―「寝たきり」―という経路を辿ってしまうことが多い高齢者。
いきなり急激な運動を始めても逆効果となり、一日の運動量を無理せずマイペースで続けることが効果的といえる。「量よりも質」。適度な運動を保つことで健康に老いることが可能といえる。
女性の場合なら「買物」も良い例だ。
買物といった行動一つでも認知症(以前は、ボケ・痴呆症と呼ばれていた)の予防にもなる。
「今日は何を食べよう?」「冷蔵庫には何があって、何を買えばよいのか」――。
自然に頭の機能を使うことは、脳の機能が働き認知症になりにくくする。