国外就労者情報援護センター(CIATE、二宮正人理事長)が9月20、21の両日、文協ビル13、14号室で『CIATEコラボラドーレス会議』を行なった。テーマは「日本で働く。ブラジルで働く。~改めて日本で働く意味を考える~」で、建設業の人員不足に対応するための日本国内での取り組みや、日系人の持つ可能性、日本で働くための注意事項などのセミナーが行なわれた。
日本社会は「高齢化して労働力低下、介護職がさらに必要」という状態であり、「移民政策を探る声もある」。21日午後から厚生労働省職業安定局の派遣・有期労働対策部外国人雇用対策課の堀井奈津子課長は、最近の日本の雇用情勢と日系人対策について、そう講演した。
08年のリーマンショック以降、雇用情勢には回復傾向があり、「技能、資格を持つ人が求職に有利」と話した。6月24日に閣議決定した、『日本再興戦略』における外国人関連項目には、建設及び造船分野における暫定的な外国人材の活用、実習制度の見直し、介護資格保持者の支援といったものが含まれ、国家として外国人雇用対策に乗り出しているという。
ただし現状は非常に不安定のようで、「派遣・請負での就労は1年以内に離職するケースが多く、11年には離職率34・9%を記録。日本語の能力不足や、月給20万円以上を希望する外国人が約9割存在する」と説明した。
日系定住者への雇用支援についても触れ、ハローワーク(公共職業斡旋所)に通訳・相談員の配置は増加傾向で、08年に73カ所11人だったものを、14年には115カ所95人まで拡大した。その他、日本語能力向上研修の実施、職業訓練機会の確保を対策に掲げ、「日系人集住地区の自治体とハローワークが連携を強化することで改善を図っている」と伝えた。
明治大学法学部の小西康之教授も日本国内での労働に関し、法規制の観点からセミナーを行なった。さらに08年6月に立ち上げた帰伯子弟向け支援事業「カエル・プロジェクト」(中川郷子代表)からも、心理学者の沢口グラウシアさんが帰伯前の注意点に関しセミナーを行なった。
日本で育った子供の場合、「ブラジルで新生活を開始しても現実逃避する。環境に溶け込めるよう甘やかす親にも問題がある」と見ている。
「治安面から自由に外出できないことが閉塞感を生み、パソコンなどに時間を費やす悪循環に陥ると、自閉症や発達障害を引き起こす」という。「帰伯前に親が文化や生活習慣を事前に理解させ、けじめをつけるような働きかけが必須」と注意を呼びかけた。
同プロジェクトはポ語教室や工作作業、職業訓練、進学準備などで、環境に適用できないデカセギ子弟の自立支援を行なう。「悩む親が多く駆け込み寺のようになっている」と現状を捉えるが、事業を通して児童らには笑顔が戻り、会話を進んで行なうなど確かな成果があると報告した。(つづく、小倉祐貴記者)