ブラジル労働雇用省の事業として2011年1月10日に文協ビル内に開所した「帰伯労働者情報支援センター」(NIATRE)が、契約通りの12月25日に閉所することになった。開所から今年6月末までの利用者は1万1298人に昇り、職業案内に留まらない多様な支援は利用者に好評だったという。「ここに来れば何とかなるという認識が帰伯者たちの中に浸透してきただけに残念」と同センターの閉所を惜しむISEC(文化教育連帯学会)の吉岡黎明会長にセンター継続の可能性について聞いた。
労働雇用省から事業委託を受け、毎月約1万レアルの補助金をISECが受け取る契約で、サンパウロ市文協ビル地下1階の一室を借りてNIATREは開所された。平日午前9時から午後5時まで職員3人体制で業務を行ってきた。
職業案内が主な業務だが、履歴書の書き方指導や企業の人事担当者を招いての講習会、ボランティア教師による帰伯子弟のためのポ語教室、年金や就学手続きに必要な書類の手配など、帰伯者が必要とする支援を幅広く行ってきた。
同センターが閉所を免れる方法は無いのかと問うと、吉岡会長は「今回の選挙で省内部の人事が大きく変わり、事業認可の基準も変わることが予想される。同省では支出削減の傾向が強く、継続が認められる見通しは立たない」と答えた。認可が下りなかった場合の、職員の生活や就職活動に悪影響が及ぶ事を加味して閉所の決断に至った。
帰伯者支援事業の今後について尋ねると「閉所するが、帰伯者支援の必要性は変わらない。私を含めたボランティア数人で事業を継続する覚悟はある」と語った。
ISECは帰伯者子弟支援のための活動「カエルプロジェクト」を三井物産の協力で行っており、閉所後の支援事業に関しても民間企業との連携が可能かを探る。文協との賃貸契約は12月までとなっており、閉所後は資料の保管場所について問題が残る。
同センターは12年に労働雇用省の予算認可が遅れ、運営資金不足による閉鎖危機が一時起きた。補助金の支給は再開されたが、その間に生まれた負債への補填には、法的な制限により充てることができず、約7万レの借金が残った。リッファなどで半額を返済したが、残額は吉岡会長が個人負担するという。
吉岡会長は、92年に設立された国外就労者情報援護センター(CIATE)では立ち上げから5年間務め、大学院の博士論文でデカセギ現象を扱った。帰伯者支援事業を復活させるには、議論の土台となる「デカセギ現象」の包括的な研究がさらに必要だと述べた。