若手民謡家による団体「グループ民(みん)」が11日夜、立ち上げ公演となる『第1回フェスティバル民』を行なった。会場となったサンパウロ市の文協小講堂には満員御礼の老若男女200人が詰めかけ、才能ある若手ら総勢60人の演目に酔いしれた。実行委員長を務めた海藤紀世さん(29、二世)は「まさか満員になるなんて」と感激し「次はブラジル人向けに公演を」と意気込んだ。
開催を後押しした「海藤三味線教室」の海藤司、「正派ブラジル筝の会」の北原民江両代表が冒頭あいさつに立ち、「今日という日を待ち続けた。長い間の夢だった」と明かし、「高齢化し減りゆく民謡愛好家だが『民』にはプロもいる。この火を灯し続けてほしい」と切に願った。国際交流基金の深沢陽所長も登壇し、「新しい動きは称賛すべき。半年前に発足したと聞くが、非日系も含めた組織で大変楽しみ」と祝福した。
舞台は尺八演奏で幕開け。江差追分節、熊本おてもやんなど、全国津々浦々のご当地民謡で来場者を楽しませた。与那嶺ヒメコさん(66、二世)は「私が生まれたのはブラジルだけど、子どものころから聞いていたから懐かしい気持ちになる。それも若者たちだけでやっているから、普段民謡を聞く倍も感動する。未来がうんと大きく明るく見えた」。
夫婦で訪れた大迫正勝さん(71、二世)も「若いのに歌いっぷりが見事。簡単に出来ることではない」と称えた。民謡民舞グループ「優美・喜楽」や丹下セツ子太鼓道場なども友情出演し、若さあふれるステージとなった。
初公演を終えた中心メンバーの西川光則さん(27、三世)は、「若者が企画した初ステージで緊張した。でもやり切れたと思う」と充実の表情。実行委員長の紀世さんも「3月から準備してきたが、土日が仕事で予行演習もなく、ぶっつけ本番だった演目も」と明かし「満員になるほど関心が高いとは思ってもなかった。思う存分、披露できた」と喜んだ。
「次はブラジル人向けにサンパウロ市文化センター(CCSP)などで開催したい。民謡は歌声とお囃子だけのシンプルな音色だからブラジル人受けしないかも。楽器を増やすなどアレンジが必要だけど、民謡本来の姿はなるべく壊したくない」と先を見据えた。
若者のステージを見守った海藤司代表は、「自分が出るより緊張した。見ているだけだと何も出来ないからね」と成功に笑顔を見せ、北原代表も「終わって一安心。民謡が好きな子ばかりだから、大人が呼びかけなくても自発的に続くはず」と満足げにうなずいた。