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身近なアマゾン(20)――真の理解のために=ディスカスの自衛方法=筆者の仮説=「あの異臭ではないか」

2006年12月23日付け

 □ペイシェ・ブセッタ[その意味は?](2)□
 「何や、日本人はブセッタも知らんのかー。教えたろか、女のあそこのことやないか」
 「ブセッタの意味は知ってたけど、なんでそんな呼び方するねん」
 「今、あんた、臭―い魚や言うたろ。あの臭い、女のあそこの匂いに似てへんかー?」
 「えー!そういえば…?…」
 「このブセッタはインディオが呼んでいる言葉からきたもんで、アマゾンではどこ行っても通用する。他所へ行っても、この名前で聞いてみたらええわ」という会話が成立。
 現在では、文字を持っていないインディオの言葉、その中にはまさに〔その通り〕と言いたくなる表現がある。色々の日常の出来事の表現は、即物的に言い表すため、我々には「ハッ!」とさせられる言葉がよく出て来る。
 現地でのディスカスという魚の呼び名がブセッタという隠語で、アマゾンのどこででも通用する、ということに興味をひかれたのである。
 この話には、後日「オチ」があった。
 日本のディスカスを専門に扱っている友達の業者さんから電話があった時に、このブセッタにまつわる話をしたのだ。
 すると、日本でこの魚を飼っていて、アマゾンには来たことのない彼が、言った。
 「この匂いは、トリコモナス菌の発生している匂いらしいですよ。だから、ディスカスが皮膚病になったら、人間の女性用に使う〔抗トリコモナス薬〕を使うと治療できるそうだ」
 この話を聞いた時、あまりにも出来過ぎた話なのでびっくりした。
 まじめな話が、もし、その話が本当だとすれば、ディスカスという魚は、かなり面白い状況の魚ではないか、と思ったのだ。なぜこの魚が、女性の陰部と共通しているのだろうか、不思議だ。
 その後、筆者は色々と考えてみた。そうしたらある仮説が浮かんできた。昨年行ったアレンケールというアマゾン中流の町の近くで、ディスカスを採集したのだが、乾季で干上がった湖が小川のような流れになっていて、その部分々々に水たまりができていて、そこにはピラニアやペイシェ・カショウロ(犬歯をもった肉食魚)、トーピードカラシン(同じく鋭い歯をもった肉食魚)、トライーラ(食肉製の獰猛な魚)などがウヨウヨいる中で、何の攻撃、防御武器を持たないこのアカラ・ディスコが、如何にして生き長らえているのか、を考えたのだ。そうすると、この〔臭いニオイ〕が何らかの防御作用を果たしているのではないか、と思い至った。
 人間ですら鼻を曲げてしまうような臭いを放出する魚だ。彼が獰猛な魚に追いかけられて、興奮するとこの匂いを放出する、いわゆるスカンク機能を持っているのではないか、と考えたのだ。
 追いかける方は、スカシッ屁を浴びて、この匂いで追いかける士気を殺がれてしまうのではないか。
 魚は、特に嗅覚が発達している、と言われている。この説、いかがだろうか。これは筆者の仮説であって、断言は出来ないが、生息環境におけるディスカスの防衛方法を考えた時、こういう特質があっても不思議ではない、と考えられる。つづく (松栄孝)

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身近なアマゾン(15)――真の理解のために=眩しい町サンタレン=タパジョス川 不思議なほど透明
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