2006年12月21日付け
サンパウロ市リベルダーデ区で、サンパウロ市の歴史的文化財に指定されている二階建ての建物(東洋文化会館前)が、十六日午前一時すぎに崩壊した。同建物は、築百年以上で保存状態が良くなく、崩壊の原因は十五日の強い雨だとみられる。この建物敷地は、「ジャパンセンター」建設を計画して、コロニアの支持を求めている天野鉄人氏(東京在住、サンパウロ青年図書館理事)の所有物。同地がセンター建設予定地にあたるため、廃物の様相をみせるこの建造物の今後の処理の行方が注目されている。
崩れた建物は、笠戸丸着港の三十年前にあたる一八七八年に建設されたもの。劣化が進み、室内は木で接ぎあてがなされていた。
三年以上前から、四、五十家族の不法侵入者に占拠されており、サンパウロ市が不法侵入者に来年一月七日までの退去を求めていたところに、今回の崩落が起こった。建物内にいた一カ月程度の乳児と二十三歳の青年、二人が負傷して病院に運ばれたが、死者は出ていない。
崩落の現場には十台を越える消防関係の車両がかけつけ、リベルダーデ大通りは一帯は騒然とした雰囲気になっていた。翌日の午後まで崩落場所の周辺一ブロックが両側とも封鎖され、作業するはしご車を見渡すように周りに人垣ができた。
天野氏は、数年ほど前から日本移民百周年を記念して、同建物敷地にジャパンセンターを設立することを計画。地下四階地上二十三階にもなるセンタービル建設説明集会をコロニアに向けてたびたび開催、計画への支持を訴えてきた。
今回崩壊した建物が、歴史的建造物であるために取り壊しの許可が下りず、建設資金手当の問題とともに、センター建設計画実現への懸念材料となっていた。
これから建物が保存され続けるのか、取り壊されることになるのか、文化財指定当局の判断が注目されている。仮に新地(さらち)になったとしても、これまでの紆余曲折からして、「天野構想」が一気に進展するかどうか予断はできない。