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ソロス氏側近の回顧録=大物の隣席で幸運つかむ

2006年12月6日付け

 【フォーリャ・デ・サンパウロ紙十一月二十七日】ジョージ・ソロス氏のもとで四十年間金融取引を営んだクローヴィス・ロッシ氏は最近定年を迎え、ブラジルへ帰国した。弟がカンピーナス大学医科へ入学した年、同氏の父が他界。同氏は家計を助けるため学業を断念し、証券セールスマンになった。
 販売を命じられたのはハーレス証券であったが、同証券会社は間もなく倒産。それ以後誰のためにも尽くす気になれなかった。ただ一人の例外は、ソロス氏だった。マレーシアのマハティール前首相からロクデナシと呼ばれ、国立英国銀行を倒産に追い込んだ悪名高き人物である。
 同氏はソロス氏とともに毎年、スイスのダヴォスの世界経済フォーラムに出席した。同氏の旅費は金融記事を寄稿するフォーリャ紙が負担、清算はセンターヴォスまでチェックした。ソロス氏は、使いたい放題の大名旅行である。
 ある年にハッカーがフォーラムのサイトに侵入し、レストランで使った全出席者のクレジット・カードの暗証番号を同氏のも含めてコピーした。同氏にとってダヴォスのフォーラムは、次年度の世界経済の行方を暗示する、商売上絶対欠席できない重要な情報源であった。ここで得られる情報は、最も高度の情報で暗証番号に変えられない貴重なものであった。
 ソロス氏は事件など意に介せず、直ちにカードをキャンセルさせた。フォーラムは不手際を詫びて、全ての夕食を無料サービスにした。カードの損害は被らず、夕食は丸儲けだ。ダヴォスは金持ち村で、オカネのことについては達人ぞろいである。
 同フォーラムでは、金持ちにとって有利な通貨の流通コスト設定が議論された。EU中央銀行の前身ドイツ銀行のチエトメイエル頭取は、EU各国の基本金利を「揺さぶりながら統一する」ことにした。
 フィナンシアル・タイムズとヘラルド・トリビューンは翌日、同頭取の名案を絶賛した。難問と思われていた金利問題は、否が応でも同頭取案にのせられた。人肉を食べる猛獣が運転するバスに、同氏も含めて全員が乗ったのだ。
 ある日の会議で食人獣と思っていた同頭取が、同氏の脇に座った。そしてヒソヒソと全EUの金利と世界経済は、ドイツの基準に合わせ統一するといった。ダヴォスでは大物の隣席は特等席で、うまく隣り合わせたら幸運といわれる。
 サルバドール市で一九九三年に開催されたイベロアメリカ首脳会議で同氏は、当時まだ財務相であったカルドーゾ前大統領の隣に座った。歴代財務相が全て経済改革に失敗した当時、前大統領はすでにレアル・プランを頭に描いていることを話してくれた。
 前大統領がトイレに入ると、同氏は隣のトイレに入って質疑を続けた。トイレの中では、忌憚ない意見が交換できた。前大統領は、大統領に就任するまでレアル・プランを秘密にした。信頼できる筋の情報として数々の的外れの憶測が飛び交った。
 情報漏洩は同氏のレポートに金粉をまぶしたが、誰もレアル・プランによってブラジルに起きることを信用しなかった。オカネのことが分からない人たちは、同氏をハイパー・インフレの元凶と呼んで、自分の都合で物価を上げたり下げたりすると糾弾した。