2006年12月6日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙十一月十七日】ブラジルの格言で「飲んだカシャッサの値段は分かるが、よろけて怪我をして、払う治療費は誰も分からない」という。この格言は中国方式を導入せよという人に聞かせたいと、経済評論家のミング氏が語る。
中国が飲んでいるカシャッサが、どんなものか知っているのか? 経済成長率は一〇・五%、インフレは一・五%、外貨準備高は一兆ドル、貿易黒字は一五〇〇億ドル、為替は八・一一元の固定相場、基本金利は年三%、大学卒業者は二〇%という内容だ。
この成果は、森にきのこが生えるようにできたものではない。中央政府が知恵を絞って練り上げた戦略の結果である。中国は毎年、地方から都市部へ流れ込む三五〇〇万人の労働者に職を与えるため、技術と外資の導入に苦慮している。
中国とブラジルを比較する者は、ブラジルの不甲斐なさを嘆く。一般庶民の生活はその日暮らしだし、将来への望みもない。金融機関から借金をしようものなら、高金利で目まいがする。運転資金への銀行融資は六二%、消費者金融は一〇七%、クレジット・カードは二二六%。
公共債務は一兆レアルを超過したが、GDP(国内総生産)に対し五一%を切ることができない。重税を課された企業は設備投資ができないから、産業は景気が後退するばかり。
なぜ、中国方式を導入できないのか。ブラジルの政治は制限に縛られて、中国のようにいかない。中国方式は中国では正解であったが、ブラジルで同じことはできない。だから比較の仕様がない。
良質のカシャッサを飲んでいる人はこけても、どの程度の怪我で済むか分かる。中国のカシャッサは、怪我もないが、カシャッサを飲んだ気分にもなれない。低賃金労働者の予備軍がワンサといるのだ。有給休暇も失業保険もFGTSもボーナスも、考えることさえできない。
それでいて、収入の四〇%を貯金する。これが老後の年金になる。大学へ進学したければ、テレビなどの家電製品の購入は諦めること。中国の治安は、厳罰主義でほぼ完ぺき。脱税や公金横領は銃殺刑。しかも、遺族から玉代を徴収する。
こんな制度をブラジルに導入できるか。中国経済の成功は、厳しい制度により成り立っている。