2006年12月6日付け
【既報関連】第三回海外日系文芸祭「みなとみらい文芸祭」の授賞式が、去る九月三十日、横浜国際センターで行われた。短歌、俳句両部門の上位入賞者は、九月九日付で紹介した。以下はブラジル関係分の文芸祭賞、入選、佳作(氏名のみ)である。
[短歌一般の部]文芸祭賞
歩み来た異国の丘の夕暮よ七十年の長き我が影
熊川 清
[同]入選
トラクターの大気揺るがす轟音に沃土のうねり広がりてゆく 斎藤 光之
日本へ行く鉄鉱石を積む貨車の百輛を数えし今朝の踏切 寺尾 芳子
角笛に誘導されつつ牛群はおりからの夕日を飲むごとく馳す 梅崎 嘉明
生え替る歯を覗かせて幼子が流暢に言うブラジル語聞く 浅海喜世子
永らえてひとり身となる移住地にあと丸二年の百年祭待つ 山岡樹代子
生きている褒美のような満開の桜仰ぎし日本の旅は
新井 知里
遺伝子が草鞋を解きし此の大地鍬の音する百年近し
藤倉 澄湖
東京の電車の音の懐しくサンパウロ市のメトロに乗りに行きしも 西 朋子
ブラジルに七十八年暮せども明日に希望をいまだ持つなり 上岡寿美子
ドーンドドド仕掛け花火の凄まじさ見上げる夜空華やぎて散る 難波ふく江
移民と謂ふ言葉も忘れ孫達に囲まれサンバ踊る幸せ
細梅 鶴孫
渡伯時に吾が持ち来たる黄揚のくし年古りたれど今だ艶もつ 上田 幸音
蒼氓の夢杳かなり杖を引く移民の裔をつつむ夕映え
米沢 幹夫
[同]佳作 星野玲子、高橋幸太郎、上妻博彦、上妻泰子、野村康、中西静世、前田昌弘、山元治彦、山本たけ子、西山溥子、門脇敏子、井本司都子、渡辺光、下小薗昭仁、下小薗とも子、上山泰子、渡辺悦子、岡本喜代子、近藤玖仁子、道田マサエ、岡崎町子、秋村蒼一郎、和田静子、金谷治美、今野千枝子、広田ゆき、岡野くに、黒沢志賀子、綱島クララ、田中朝子。
[俳句一般の部]文芸祭賞
アマゾンの神も留守なる樹海かな 山口まさを
養国は戦なき国銀河濃し 佐古田町子
錦きて帰る気もなく菊根分け 名和喜美子
母の日をすませ養老院入居 佐藤 孝子
[同]入選
沼は涸れアロアの卵低く低く 下川 洋
葡萄穫り入れ安らぎの五六日 織田真由美
わっと孫等来て雑炊をすることに 岡本 朝子
流れ星麻薬監視の国境兵 鈴木 静林
赤道下胎児と語り蜜柑接ぐ 堀内 登
満載の椰子の実カヌーすべり行く 椿 栄子
入江秋風痕なべて東向く 長井 礼緒
祖となりて築く家系や石蕗の花 馬場十二子
移民の日毅然と納屋の山刀 上山 泰子
天水で育ちし子等も移民祭 東 比呂
兵器めく農業機械大豆熟る 浅見 天童
本杭を牛に曳かせて牧手入れ 東 抱水
東雲に紫漂うジャカランダ 遠藤 皖子
朝顔を数える子の声霧一面 遠藤 勝久
紫蘇の香の届く国際宅急便 吉岡 文子
葱坊主祖父の算盤五つ珠 山本 紀未
夕焼や土になりたき国ふたつ 浜田 一穴
信濃恋う亡夫の植えし柿たわわ 山上とし子
秋の蚊といへど侮り難き国 前田 昌弘
又も鍋焦がして老の春眠し 坂本美代子
元日や庭花活けて移民妻 照屋美代子
七曜の日毎にほぐれゆく牡丹 山本たけ子
[同]佳作 森岡春子、馬場照子、藤倉澄湖、徳永悦子、前橋光子、秋吉功、山崎治己、星野玲子、中馬淳一、西山ひろ子、鈴木貞男、新井慶子、下小薗とも子、牛尼楊子、西野すみ子、岩井和子、宮原育子、上八重、佐藤けい子、田中紅梅、井上人栄、藤本千秋、稲垣八重子、青木駿浪、小橋矢介夫、富樫雄輔、名越つぎ代、里晋平、斎藤光之、香山和栄、成戸正勝、阿久津孝雄、清水照子、百合由美子、猪野ミツエ、原味佐夫、須賀あつ子、田中春光、佐藤美恵子、秋枝つね子。