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身近なアマゾン(13)――真の理解のために=クルゼイロ=アクレ州の小川で=狙う未知の魚は採れず

2006年11月25日付け

 □ペルー国境の町で[前編]昼の採集編(3)
 ブラジルの大西洋岸から、ブラジル中央部を横断してペルー太平洋岸まで一直線で通じる、いわゆる〔トランスアマゾニカ計画〕も、現在では頓挫しているようである。
 ちなみに、ここクルゼイロから雨季に船でジュルア川を下って、マナウスまで到着するには約二週間かかるそうで、逆に上りだと約一カ月かかるという。
 そのうえ、現在のように乾季になると、夜は危なくて(流木や浅瀬によって)船が航行できないので、もっと時間がかかるとのことだった。
 州都リオ・ブランコまでは飛行機だと一時間弱で行けるのだが、旅費が片道二百ドルもかかってしまう。どおりでここの住民は他のアマゾン地域の住民と違って、暗い顔をしているように、私には思えたのだ。
 空港でも飛行機の到着時間は、送迎の人と見学の人でごった返しているのにも納得が出来た。〔どこかよその土地へ行きたい〕という気持ちと〔誰か変わった人がこの町に来ないか〕という刺激を求めて、好奇心で空港に集まって来るようだ。
 何か物寂しい大陸の孤島にやって来た、という雰囲気が充分にある。
 翌朝、約束通り現れたタクシーに採集道具一式と必要な物を乗せて出発、クルゼイロの町に面して流れるジュルア川、川幅二百メートルをフェリーで渡り、一旦国道に出て進む。
 周囲の環境は、けっこう山あり谷あり、舗装されていない道を車は上ったり下がったりの連続で、時々採集に好適な小川を横切ったりする。
 そんな川に立ち寄っては、採集を試みるのだが、普通の地味なプレコ(吸い付きナマズ)やカラシン(イワシ型をした日本のハヤのような小魚)しか採れない。いい加減いやになってしまっていた。
 でこぼこ道を六十キロ程走っただろうか、ようやくあるインディオ部落に到着した。そこで、彼らの居留地を流れる川でも採集したのですが、知らない魚、綺麗な魚、変わった魚は採れなかった。
 仕方がないので、このインディオ部落に立ち寄って話を聞いてみた。応対に出てくれた学校(小学校)の先生が親しく話してくれた。
「ここから数十キロ行くと別のインディオ部落がある。そこのインディオはまだ文明を採り入れない未開の種族で、よそ者には、いまだに恐怖心を持っていて、凶暴なことをするかも分からない」「もし居留地近くで車が止まったりしたら、石を投げてきたり、樹の上から大石を落としたりするので、近づかないほうがいいかも知れないよ」と言う。
 その上、案内の運転手も車の状態や道路の状態が悪いことを理由に「これ以上奥に行くのはやめよう。ジープかトラックでないと難しいかもしれない」。ここまで言われて、これでは無理しても仕方がないかもしれない、と思い、引き返すことにした。
 この運転手君もインディオの血が四分の一流れているそうで、ここの先生の部族とは親戚関係だという。運転手君の言うには「インディオなんか、ぜんぜん怖くない」のだそうだが、空元気かもしれない。毒矢が飛んで来たりしたら大変。こんな所で死にたくない。
 このあと、このインディオ部落で話好きなおじちゃん、おばちゃんと一時間ばかり喋って帰ったのだった。つづく (松栄孝)

身近なアマゾン(1)――真の理解のために=20年間の自然増=6千万人はどこへ?=流入先の自然を汚染
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身近なアマゾン(3)――真の理解のために=ガリンペイロの鉄則=「集めたキンのことは人に話すな」
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