【エスタード・デ・サンパウロ紙十六日】ルーラ大統領の次期政権に向けての基本政策指針が模索されている中で、社会福祉制度改革案が政府およびエコノミストの意見を二分している。
十日に行われた税制改革検討委員会で、メイレレス中銀総裁を始めとする財務省および予算管理省のエコノミストら二十人が、最低賃金の上昇率と社会福祉支給とは切り離すべきだとの提案がルーラ大統領に上申された。最賃の上げ幅を年金や貧困家庭手当(ボルサ・ファミリア)に適用しないというもの。
この背景には年々上昇する社会保障省の赤字を減らす狙いがある。これに対しルーラ大統領は拒絶反応を示し、既定路線を継続していく考えを強調したという。
大統領側近によると、貧富の格差の是正は大統領最大の公約の一つであり、貧困およびそれに準ずる手当の受給者は二二〇〇万人に達しており、それをないがしろにする政策は取らないと言明しているとのこと。なかでも家庭貧困手当が唯一の収入源となっている家庭がほとんどで、この救済がルーラ政権の目玉であり、今回の選挙の勝利につながった点を強調している。
IBOPEの選挙前日の世論調査によると、人口の四三%を占める最賃二倍までの所得層のうち、七〇%がルーラ候補に投票した。これを踏まえて、十四日に行われたルーラ大統領と官房長官、財務相、予算管理相の経済問題検討四者会談では社会福祉改革案は議題にのぼらず、闇に葬られた形となった。
それでも政府内では意見は二分している。改革案賛成派は本年末で累積赤字が一〇〇〇億レアルに達すると予想されていることから、再度ルーラ大統領を説得する意向を示している。
いっぽう反対派は社会保障院の体質改善を含む再建案を来週、大統領に提出する。これには昨年から実施している年金受給者の再登録による不正の撤廃や、国税局との協同作業での企業の年金積立徴収の徴底化が盛り込まれている。さらにGDP成長が五%を超えると、十年後には収支トントンに持ち込めるとの考えを示している。
社会福祉制度改革に待った=貧富の差是正優先と大統領=政府内賛成派は再度説得へ
2006年11月17日付け