ブラジル日本商工会議所(田中信会頭)は、十日定例昼食会を開催し、ブラデスコ銀行の役員、マクロ経済に詳しいオタビオ・バーロス氏を招いて、「二〇〇七年のマクロ経済」と題した講演を行った。同氏は大蔵省補佐官を二回務め、ブラジル中央銀行の顧問、ブラジル銀行連盟の理事などを歴任してきた経験を持つ。「ブラジルは転換期にある」と同氏。特に生産部門において顕著で「伝統的に閉ざされていた経済がより国際的になっていく」と話した。
ブラジルは九六年まで地球上で最大のインフレを抱え、対外債務は二千五百億ドルだったが、今、「社会的財政の全ての改革が行われた」という。
対外債務は八百億ドルに。国際収支を見ても、〇三年に投資国として評価されたメキシコと、今のブラジルは同じ水準にある。対外債務の返済に関しても国際的な信用を得つつあり、今年の経常収支は四百六十億ドルを見込んでいる。「ブラジルは対外脆弱性を克服した。ブラジルが政治や国際問題に影響されてきた時代は終わった」。
その上で「誰が大統領になってもレアルの強化はできたし、今の為替は長期的に保たれるだろう」。
バーロス氏によれば、多くのエマージング経済において、非効率生産性の克服が課題になっており、ブラジルは現在のレアル高に合わせて改革が必要となっている。税制改革、年金問題や解雇時の罰金制度の改善、インフラの整備などが挙げられた。
レアル高によって輸出企業の売り上げが悪化しているという見方もあるが、「ブラジル経済が開かれてきているという側面を重視していないための考え方」とバーロス氏は反論を示す。「経済が開かれていればインフレの危機も減り、他国からの技術も入る。ブラジル経済全体を考えれば、現状はプラスに働いている」。
そして、これからの可能性が見られるのは、国内消費市場を重視したもの。国内向けのコモディティー商品などが有利だという。
ブラジルの国内総生産(GDP)は低いという指摘もあるが、バーロス氏は「国民にはGDPが低いという意識はない。選挙で与党が票を得たことがその表れだ」と述べた。
同氏は「ブラジルにとっていいことは、いずれにしても今のレアル高が続くこと」と強調。「改革を行ったにしても、レアルが下がる傾向はない」。
また「中国は資本主義にとっての未開拓地であり、確立された産業を持っているブラジルと比べるものではない。ブラジルが開拓すべきはインフラにある」。産業投資の九割以上は既存物への投資に使われているのが現状だ。
バーロス氏は「ブラジルは三%の成長で満足することなく、四から四・五%で勝ち組を目指すべきだ」と締めくくった。
「ルーラ政権下で改革は可能か」との会場からの質問に対して、「与党は二千二百万票の大差をつけ、野党との関係も安定している。『改革が必要』だという点での国のコンセンサスは誰も疑わない。ルーラ政権が学習を進めており、成熟のスピードは早い。PSDBよりも現実主義的なことができるだろう」と答えていた。
転換期にあるブラジル経済=対外脆弱性を克服=レアル高は長期的に不変――ブラデスコのバーロス氏、会議所で講演――「ルーラ政権で改革可能」
2006年11月17日付け