【エスタード・デ・サンパウロ紙二日】過去三年間に急増し続けてきた携帯電話の販売が今年に入り、上げ止まりの状態となり鈍足化をみせている。今年一月から八月までの販売台数は八七〇万台で、昨年同期の一三三〇万台に比し、三五%の減少となった。この原因は、これまで各社が競合で割引特価作戦を重ねたことが響いて収支決算が赤字になったため、これを廃止し、収益を上げる戦略に変更したため。このため貧困層の購入が止まったとみられている。しかし業界では、富裕層では九八%まで普及しているが、最貧困層ではまだ三〇%と普及率が低いことから、さらに販売は伸びるとして、技術改善や顧客サービスに注力していくとの考えを示している。
調査機関が九州都の二万六〇〇〇人を対象に調べたところ、二〇〇四年上半期から〇六年上半期までの所得階級別による普及率は最低層のクラスE(平均月収三一四レアル)が一三%から三〇%となり、上昇率では一番だった。各メーカーの意図が的中したことになる。
しかし低価格サービスの廃止で伸びが頭打ちとなると予想され、それにとって代わる、出血をともわないサービスが不可決となる。クラスD(五三四レアル)は三五%から五一%へ、クラスC(一〇二八レアル)は六〇%から七四%へ、クラスBは八三%から九〇%へ、クラスA(五八八二レアル)は九六%から九八%へとなった。いいかえるとクラスAは十八歳以上の成人のほぼ全員が携帯電話を所持しているのに対し、クラスEでは七〇%が、クラスDでも半数が所持していないことが明らかになった。
全国でのこれまでの四年間の一月から八月までの販売台数は、〇三年が五二〇万台、〇四年が一〇六〇万台、〇五年がピークで一三三〇万台、今年が八六〇万台だった。過去三年間は各社がクリスマスや母の日のプレゼント用に特価サービスを実施したことで、商品の売り上げのトップを記録した。
しかし特価サービスが普及を促したものの、各社の投資は欠損となって表われた。業界の今年六月までの過去十二カ月間の収入決算はマイナス〇・四%となり、過去十三年間で初めて赤字決算を計上した。これにより各社では収益挽回策が至上命令となった。
メーカー筋によると、電話器の売買は二の次で、業務内容をいかに評価してもらうかにかかっているという。テレマール系列では携帯電話に使うクレジットを公衆電話や固定電話にも併用できるサービスを始めた。また、レアル銀行ではタクシーの乗車料金を携帯電話で口座から引き落とし、タクシー運転手なり会社の口座に振り込むべく、行員を対象に試験的に行っている。料金支払い時に銀行に連絡すると折り返し確認がくる仕組みとなっており、現金のやり取りがないことで強盗の被害も少なくなるとみている。
発展途上国の携帯電話保有率(一〇〇人当り)は以下の通り(カッコ内は一人当りの平均年収入)。ロシア九七(一万一〇〇〇ドル)、チリ七四(一万一九〇〇ドル)、アルゼンチン六七(一万四一〇〇ドル)、コロンビア六〇(七三〇〇ドル)、ベネズェラ五八(六一〇〇ドル)、エクアドル五七(四三〇〇ドル)、ブラジル四九(八五〇〇ドル)、メキシコ四八(一万一〇〇ドル)、中国三二(七二〇〇ドル)、ペルー二四(五九〇〇ドル)、インド一〇(三三〇〇ドル)。
頭打ちの携帯電話販売=各社が戦略変更=出血サービス止め収益重視=貧困層への普及率は3割
2006年11月10日付け