【エスタード・デ・サンパウロ紙十一月八日】ブラジル地理統計院(IBGE)は七日、二〇〇六年の経済成長率を三%以下へ下方修正する可能性があることを明らかにした。自動車の生産落ち込みと為替差損の影響で、工業生産は九月に前月比で一・四%減となり、前月比増が二カ月続き、景気回復ではないかと喜ばせた工業生産は元の木阿弥となった。産業界は不安定な動向を気に止めていないが、応用経済研究院(IPEA)は状況を考慮し、これまでの経済成長率予測三・三%を引き下げると発表した。銀行も三%以下へと引き下げた。
全国工業連盟(CNI)による工業生産の回復祝いが終わった翌日、IBGEは経済成長率の下方修正を示唆した。市場は寝耳に水の発表に驚いている。原因は産業のけん引車、自動車産業の落ち込みと為替らしい。産業の寒暖計である資本財の動きに合わせ、投資の動きも後退した。
ルーラ大統領が経済成長を公約した矢先、工業生産の悲観的予測で〇六年国内総生産(GDP)にも下方修正の動きがある。まるで、再選により意気揚揚とする大統領の公約へのイヤガラセみたいだ。
CNIが祝杯に酔っていたように、状況は満足とまでは行かないが追風であった。九月は昨年比一・三%増、年間累計で二・七%増、第3四半期は前期比〇・四%増、同期の昨年比二・七%増であった。
IBGEの見方では九月の工業生産の動向は、上半期の緩やかな上昇から第3四半期に安定傾向へ移った。その後多少の揺れはあるものの、横ばいとみていた。ところが九月は自動車が前月比九・三%の落ち込み。一部組み立て工場で起きたストの影響らしい。
工業生産の落ち込みは、自動車だけではない。工業の二十三業種中、十二業種が落ち込んでいる。IBGEは基本金利の引き下げだけでは、産業の回復は困難とみている。基本金利の他に減税やインフラの整備、投資の回復も同時に行う必要があるという。
九月の工業生産落ち込みで経済成長率の再下方修正を余儀なくされ、アナリストらにはショックであった。GDPの落ち込みは、基本金利の引き下げだけで終わらず、産業の疲弊か産業構造の欠陥かに議論が向かいそうだ。
政府の生活扶助金や最低賃金の引き上げが、景気回復の起爆剤になると見たのは早計か。経済分析の専門家はいい加減で杜撰な予測や分析が習慣になってしまったようだ。景気回復と見た楽観的判断は、ブラジルの怠惰な慢性病か。
銀行による〇六年経済成長率の予測は、現時点では三・一%だが、三%以下への下方修正の可能性を容認している。自動車や携帯電話、家電製品など耐久消費財では八月、為替変動の影響で〇・二%減を記録し、二・九%とした。
テレビや音響機器などの耐久消費財の生産は、輸入品との競合で輸出が落ち込み、下降傾向にある。輸入は、昨年比で八一・八%も増加した。耐久消費財の分野では業界生き残りのために、急激な為替変動を避ける応急措置が求められている。それがないと国産品は、輸入品に駆逐され、市場は選手交代となる。
GDP成長下方修正を示唆=IBGE=3%台割り込み=一転マイナスの工業生産=大統領公約実現に影
2006年11月9日付け