【エスタード・デ・サンパウロ紙十一月一日】通貨政策で批判の矢面にあるメイレーレス中央銀行総裁は十月三十一日、中銀のインフレ抑制政策がルーラ政権の財政を支え、大統領再選への道を開いたと釈明した。適切な中銀の通貨政策が国民の生活水準向上につながり、大統領選挙では与党を有利に導いたのであり、これはインフレ抑制の結果であると自画自讃した。反面、セーラ次期サンパウロ州知事(PSDB=民主社会党)は、通貨政策の我田引水と選挙の与党勝利について、国民が景気低迷で不満の限界にあり、経済政策の変更は風雲急を告ぐと訴えた。
中銀総裁更迭の叫びが高まる中、大統領を再選に導いた大きな要因の一つは中銀が成し遂げた経済の安定であると、メイレーレス総裁が強調した。ルーラ大統領は再選の栄冠を獲得したが、大統領選挙が多くの人に苦杯を味合わせた。
第二期政権の構造改革にあたり、先ず俎上に上がりそうなのが中銀総裁だ。中銀の昇格は棚上げされ財務相配下に組み込まれ、大統領との直通チャンネルは廃止。低率経済成長の責任を問われ、角を矯めるために牛を殺すと批判され、総裁は四面楚歌の中にある。
中銀総裁はブラジルの産業を葬ったと批判され、一方ではルーラ再選で陰の立役者だと称賛されるが、複雑な心中を次のように語った。インフレの鎮静で消費者は、購買力が向上し恩恵を受けた。国民には最も貢献したと自負する。
インフレと経済成長は、同居できない。中銀は経済成長のためにインフレが、目標を超えることがないと保証する義務がある。それにより金利もリスクも低下、生産と消費は向上した。しかし、経営環境の整備だけでは、経済は成長しない。金融危機やパニックなどの外的要因に備えファンダメンタルスの充実を図る必要があるからだ。
メイレーレス総裁は、経済成長のためある程度のインフレを容認するべきという説を誤りだという。インフレを容認する中で経済が成長した例を見たことがない。基本金利引下げは消費を刺激するが、経済成長には役立たない。経済成長は戦略が必要で、金利は二次的なものに過ぎない。
メイレーレス説に真っ向から反論するのが、セーラ次期知事である。再選された大統領を法の求める範囲で尊重するが、一期政権で採った経済政策は禍であったと酷評した。これは国民を経済低迷という罠に嵌めたのだという。
新政権への協力は、経済政策の変更が前提条件である。二〇一〇年選挙でも経済成長は、政権獲得の切り札であると次期知事は声明を発表した。貧富の格差を増長する経済低迷は、財務省の優柔不断と臆病の結果がもたらしたと糾弾。
インフレ抑制による経済成長はゴマカシであり、国家を地獄の中へ突き落とした。途上国の中でも恥ずべき成長率を示し、経済の安定など詭弁もよいところである。現在は世界でも稀なダメな国であるが、これからは世界が注視する良い国になると、次期サンパウロ州知事は宣言した。
中銀総裁、批判の矢面に=通貨政策で釈明=ルーラ再選は経済安定の賜物=セーラ知事、酷評の急先鋒
2006年11月2日付け