「きょうはお盆です」と老移民らは語る。11月2日は「万霊祭」で日系コロニアでは「死者の日」と呼んだりもする。カトリックですべての死者を弔い、煉獄で罪の償いに苦しむ人の霊魂が1日も早く天国に入れるように祈る日なのである。多くの信徒が墓参しセミテリオは人々でいっぱいになり花々が満ち香煙が漂い初夏の風景を爽やかに彩り飾る▼盂蘭盆会のような迎え火と送り火や盆棚を設え茄子・蓮の葉などで飾り読経による供養もない。けれども、霊を慰めるフィナードの行いがお盆とはよく似ている。日本では年に一度だけ亡くなった人の霊が生まれ育った家に帰ってくる。その霊魂が道を誤らないようにと庭で焚くのが迎え火だし帰るときは送り火と昔の人はなかなかの知恵者なのである▼お盆になると墓掃除が欠かせなく先祖が眠る墓に花を捧げ安らかなれと祈る。これも万霊祭とそっくりだし、墓参者が多すぎて混乱する景観も同じなのも面白い。サンパウロの墓地ではコンソラソンが古くアラサが続く。駆け出しの頃はフィナ―ド取材で墓に出向いたものだが、もう40年近くも前にアラサで突風が吹きユーカリの木が倒れ参拝した人が直撃され死亡するという珍事も忘れられない▼キリスト教では11月1日が「諸聖人の祝日」であり、大勢の聖人たちの徳を称え感謝もする。このような祭りが多いので「死者の月」ともいうが、忙しい日々から逃れてのミサや墓参も心が洗われて清清しい。神父や牧師もながら日本移民にとっては和尚がふさわしい。寺の説法も法悦に富み結構なものだし「きょうはブラジルのお盆です」。 (遯)
2006/11/02