「このままでは日系人追い出し運動を起こされかねませんよ」。先月訪日したおり、外務省の中南米局関係者から強い口調で言われた。静岡県を中心に、ブラジルとの犯罪人引き渡し条約締結と代理処罰を求める署名が約六十八万人分も集まり、今月中に外務省に提出されることを踏まえての言葉だ。やはり、この人数は重い▼昨年末で六十八人ものブラジル国籍者が日本国内で事件を起こし、国外逃亡しており、日本人被害者への同情が広がっている。もちろん署名自体は、外国人排斥とはまったく異なる流れだが、中には排他的なニュアンスをもって協力した人もいるだろう▼つい先日も、日本でブラジル人支援ボランティアをする知り合いから連絡があった。「最近、わけのわからない人からのブラジル人排斥っぽい内容の脅迫みたいなメールがきた!」と怯えていた。もちろん日本人の仕業だろう。事実、インターネットの「2ちゃんねる」サイトなどを見ると、ブラジル人蔑視や差別をする書き込みは日常的だ▼ほっといてよいわけがない。ブラジル側の日系社会として何ができるのか。もし、日本からの逃亡犯をブラジルで裁判にかける代理処罰が実際に始まったとき、被害者遺族が来伯するおりに、こちら側での通訳や移動、宿泊等をボランティアで支援をすることも必要になってくる。そのような面で協力していくのも一つのあり方だ▼のほほんと他人事みたいに言える状況ではなくなりつつある。百年祭の機運をそこなうどころか、下手すれば日伯関係にヒビを入れかねない。今こそ、対策を考えるべきではないだろうか。(深)
2006/10/25