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インフレと経済成長、共存可能=元FGV教授が新説発表=ノーベル経済学賞を受賞=近代通貨論の導入検討へ

2006年10月11日付け

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十日】ブラジルでは経済成長を巡って大統領候補のルーラ大統領とアウキミン前知事が激論を交わす中、米経済学者のエドムンド・フェルプス元FGV(G・ヴァルガス財団)教授が九日、緩やかなインフレは経済成長や雇用創出と共存できるとする近代通貨論を発表し、ノーベル経済学賞を受賞した。同博士は近代通貨政策の提唱者として、世界の注目を浴びている。政府の経済スタッフは、これまでの経済成長を犠牲にしたインフレ抑制一点張りの経済政策を見直し、近代通貨政策の導入を検討するようだ。
 インフレを経済発展の敵とする従来の定説が、崩れつつある。経済成長や雇用創出と共存しながら、緩やかなインフレと管理法を同元教授が唱えた。
 近代通貨政策の内容は、一、緩やかなインフレは容認し、経済成長を優先。二、中央銀行は二つの役目を負う。雇用創出とインフレ対策。三、中銀担当者は、単なるインフレ抑制者ではない。経済成長が重要な使命だ。四、中銀は通貨政策だけに留まらず、生産政策にも配慮すべきだ。これまで中銀の通貨政策は、偏っていたらしい。
 フィリップ曲線と呼ばれる従来の経済理論は、インフレが雇用に比例し抑制は失業によって制御されるとした。雇用の増加は、消費の過熱とインフレの台頭を招く。だからインフレを押さえるために失業は、止むを得ないと考えた。
 PT政権の左翼経済学者や一般の経済学者でもフィリップ曲線の信奉者で、失業はインフレ抑制の代価であった。現在もブラジル経済がフィリップ曲線の呪縛にとり憑かれていることに変わりはない。フィリップ曲線は、ブラジル経済の心臓と頭脳の能力に応じて訂正する必要がある。
 インフレの原因は、購買力や雇用増加だけではない。企業経営者の経営手腕や事業計画、製品価額の設定、従業員へのベア、失業率と昇給率の関係などの要因を忘れている。中銀の基本金利割り出しには、これら要因が含まれていない。中銀が、国内市場の先行き見通しと基本金利の兼ね合いを誤算していた。
 低率インフレの設定は、引続き低率インフレ傾向を呼び込み、市場の安定を形成する不思議な力がある。これだけの条件が揃うと、雇用創出も経済成長も連動する。ルーラ候補とアウキミン候補が経済成長を議論するなら、近代通貨論を勉強して欲しい。
 同博士が、近代通貨論を発表して久しい。それが今、やっと認められた。ブラジルは長い間、インフレを目の仇にして無駄足を踏んだようだ。政府には古典経済学の狂信者が多数おり、インフレは、適量であれば経済の活性剤になるという近代通貨論が聞き入れられなかった。
 ブラジルに近代通貨論が、もろ手を挙げて迎えられるわけではない。同理論を導入して成功した前例が、ないからだ。米国などが実験して、理論の正当性を証明するのを待つという学者もいる。