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〃琉僑〃=日本との新しい関わり方=世界ウチナーンチュ大会が目指すもの《第2回》=世界17カ国の県系人=ビジネスの関係を構築

2006年10月3日付け

 【沖縄発】一世の高齢化と減少という現実に直面して、母県との関係を模索していない県人会は一つもないだろう。二世以降の県との関係は、県費留学に行った者ですら、音信不通になる人が多いのが現状だ。
 ところが沖縄では、県人子孫が新しいネットワークを形成しつつある。しかも、単に母県との関係ではなく、横のつながりが模索され、ビジネスでの現実的な利益を伴った世界的なネットワークを模索している点が大きな特徴だ。
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 「琉僑(りゅうきょう)」という言葉を聞いたことがあるだろうか。琉球の〃琉〃と華僑の〃僑〃をつなげた造語で、華僑をモデルにした沖縄県系人の世界的ネットワークのことだ。
 沖縄県観光商工部交流推進課の平成十八年(〇六年)度資料によれば、日本有数の移民大県だけあって、海外の県系人は約三六万人にも上る。
 ブラジルの県系人は約一七万人を数え、全世界の半分を占める。南米全体で約二七万人と四分の三。残りは米国の九万人などだ。
 県人口は一三六万人なので、その四人に一人に匹敵する血縁が外国にいる計算になる。琉僑(りゅうきょう=華僑の沖縄版)という考え方があり、世界の県系人(ウチナーンチュ)の絆を強めるイベントを始めた背景には、その人的資源を活性化に活かしたいという思いがある。
 一九九〇年の第一回世界ウチナーンチュ大会は大きな影響を残した。「琉僑」というビジネス・ネットワークを形成しようという動きが生まれ、九三年十月にはHUB(ハワイ・ウチナーンチュ・ビジネスグループ)が結成された。
 沖縄からの海外移住は、ハワイへ向かった一八九九年の契約移民二六人を嚆矢とする。沖縄移民のいにしえの地は今、世界のウチナーンチュの中心として新たな核を形成しつつある。
 九五年の第二回世界ウチナーンチュ大会をきっかけに、ハワイの仲宗根ロバート氏がHUBの拡大版としてWUB(世界ウチナーンチュ・ビジネス・アソシエーション)を提唱し、九七年に設立された。
 十七カ国に二十一支部があり、各国の沖縄系若手ビジネスマンのネットワークを形成している。
 五年に一度の世界ウチナーンチュ大会では間が空きすぎるという声すらあり、〇三年九月から世界ウチナーンチュ〃会議〃が始まった。WUB(ワブ)ハワイとハワイ沖縄連合会が共催し、同地で行った。
 沖縄からの南米移住はペルー移民が嚆矢。一九〇六年だった。今年一月に沖縄県人ペルー移住百周年を記念して、リマで第十回WUB世界会議が開催された。
 琉球新報〇六年二月十四日付けによれば、WUB提唱者の仲宗根氏はリマの記念講演で、「ウチナーンチュの数は少ないが、琉球王国が実現したように、グローバリゼーションの時代に生き残るために国際化する。小さなネットワークでも、有効な意味を持つ。中国人、インド人、ユダヤ人は、何百年、何千年以上も前から彼らのネットワークを開発した。ウチナーンチュの世界的ネットワークWUBはちょうど今、始まったのだ」と語った。
 WUBの現会長はブラジルの与那嶺真次氏(沖縄県人会副会長、沖縄文化センター理事長)だ。新しい世界的なネットワークの中心には日系ブラジル人が就任している。
 笠戸丸移民の半分近くを占めたのは沖縄県系人であり、全世界のウチナーンチュの半分を占めるブラジルは特別な地だからだ。
 世界ウチナーンチュ大会でもメンバーが世界から集まってシンポジウム、ビジネスフェアを予定。その後、次回の世界ウチナーンチュ会議は、〇八年にブラジル移民百年祭記念イベントとしてブラジルで開催される。
 〃琉僑〃という日本人初の、民族的な世界ネットワークの試みが、いま静かに進められている。
 世界ウチナーンチュ大会は島を出たあらゆる県系人が、自らのアイデンティティを確かめ合う貴重な機会だ。「琉僑」という言葉は、大会の生みだした国際化時代の新しい民族像のようだ。
(つづく、深沢正雪記者)

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