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日系は『宝』か『失敗』か=海外日系人大会代表者会議=法務省改革案に反発の声=外国人就労政策の維持求める

2006年9月29日付け

 【東京発=既報関連】第四十七回海外日系人大会の二日目、代表者会議が都内のJICA国際協力総合研修所で行われた。法務省による外国人受け入れ改革案で日系人優遇取り辞めの方向性が出されたことへの反発が表明されたほか、全力を挙げた日本語教育への取り組み、若い世代の日系社会への取り込みを進める点などが確認された。さらに、来年は七月にサンパウロ市で第四十八回大会とパンアメリカン日系人大会が合同開催されることが正式に決議された。
 今回は十四カ国の代表者ら約四十人が討論し、約八十人がそれを見守った。午前九時半から午後三時半まで六つのテーマについて話し合い、最後は大会宣言を採択して終わった。
 もっとも議論が白熱したテーマは「在日日系就労者への支援」。法務省のプロジェクトチーム(主査・河野太郎副大臣=当時=)が「日系人の特別扱いを辞める」方針を打ち出したことへの反発が見られた。

「どっちなんだ!」

 「日本側はこの大会では『日系人は国の宝』とか『外交上の貴重な人材』と言う一方で、国内就労者(デカセギ)がいろいろな問題を起こしているからって、『日系人受け入れは失敗だった』とか『日系人優遇は辞める』とか先の改革案みたいなことも言う。日本政府は一体どっちなんだ」。強い口調で、そう訴える発言者もいた。
 同改革案では日本語能力がないものには在留資格の更新を認めない方向性が示されたことに関して、議長の一人、二宮正人USP教授は「ブラジルやペルー、アメリカに日本人が移民していったとき、それぞれの国でその国の言葉ができないから出て行ってくれなんて言われたことはない」と比較。会場からは「断固として抗議した方がいい」などと憤る声まであがった。
 また、「日系人は雇用の調整弁として扱われている。間接雇用が多いから生活が安定しない。日系人の安定化を進める施策をしないで、問題が起きたからもうビザを出さない、ではおかしい」などと直接雇用を進める施策や、総合的な対策を求める必要性も論じられた。
 宣言にも「現行の日系人優先の外国人就労政策に変更のないよう強く望みます」と入れられた。
 別のテーマ「若い世代を日系社会に」では、若者らによるユース会議で「日系社会の主導権を少しずつ若い人にゆずり、年輩の方はアドバイザーとして活躍する」「各国の日系人協会の活動を参加・サポートするだけでなく、プランニングからも参加できる場を増やす」などの意見が出たと紹介された。
 提案として、各国の協会が「日系青年実現プロジェクト」を募集・審査し、上位を獲得したプランを支援(ローンを組む保証人になるなど)や監査するアイデアが出された。
 他方、世界の日系社会をインターネットで結ぶ「国際日系ネット」構想では、「引き続き推進します」の文言を宣言に入れて終わった。三年前に決議され、昨年二月に「国際日系ネット協議会」が海外日系人協会内に設立されたが、主に資金難から具体化への目途はたっていない。

ブラジルの百周年影薄く

 また宣言には六テーマ以外に、要望として「ブラジル移住百年祭への協力支援を」が盛り込まれたが、本文はわずか二行。本番まですでに二年を切ったが、メインの記念事業に関してはまったく説明がなく、日本側や世界の日系団体にとっては、どのような百年祭になるのか分からないままだった。