ブエノスアイレスの日系団体「アルゼンチン日系センター(Centro Nikkei Argenrino=CNA)」がこのほど、日本人移民の当事者である一世や日系二世、三世を対象としたインタビュー事業に着手した。映像による記録が中心となっており、その一部は全米日系人博物館(米国ロサンゼルス)がインターネット上で展開しているプロジェクト「ディスカバー・ニッケイ」と連動してウェブサイトで公開される予定だ。隣国アルゼンチン日系社会の新しい試み。同センターが発行する「CNAニュース」の許可を得て一部修正の上、転載する。
世代交代が進むアルゼンチン日系社会では使用言語の違い、成長時の社会環境の違いなどから、一世と三世の間などではコミュニケーションが十分ではない場合が少なくない。
さらに戦前、戦後に移住した一世の高齢化が進んでおり、「家族の移民史」が語り継がれずに消え去ってゆこうとしているのが現状だ。
また、南米に夢を求めてアルゼンチンへと渡った現在四十、五十歳代の移住者や、デカセギ先の日本で誕生し、両親と共にアルゼンチンに帰国した日系子弟など、アルゼンチンの日系社会はそれぞれの家族が実に多様な歴史を刻み続けている。
このプロジェクトはインタビューによってそれら生身の移住者、日系人の足跡とその思いを映像で記録していくもの。実際の取材・編集活動に当たっては当センターの会員やボランティアの中から新聞や放送などの経験者が集まってプロジェクトチームを編成し、取材や編集作業を行っている。
インタビューで得た映像はライフヒストリーの記録として保存されるほか、前述の「ディスカバー・ニッケイ」と連動して数分間のビデオクリップに編集され、インターネット上で紹介される予定。それらの記録を基に、さらに個人史を掘り下げてゆくドキュメンタリー制作も検討されているという。
このプロジェクト始動に合わせ、アルゼンチン日系センターと全米日系人博物館は先月、ブエノスアイレス市内でプレゼンテーションを行い、コミュニティ・フォーラムやビデオクリップによる日系人のインタビュー、日系社会関連のデータベースを盛り込んだ「ディスカバー・ニッケイ」のコンセプトとインタビュー事業の概要を発表した。
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「アルゼンチン日系センター」は、アルゼンチンの日系人2、3世が設立した社団法人。
移民史を肉声と映像で残す=ブエノス・アイレス=亜国日系の新たな試み=全米日系人博物館と連携
2006年9月16日付け