ちらし寿司を油炒めにした主婦の話をきいたことがある。もちろん自身がこしらえた寿司ではない。主婦は二世だった。寿司がブラジルに浸透しているとはいえ、まだこうした〃調理〃?がある。寿司のヴァリエーション(変化、変形、変種)は、最近も目覚ましいが、完成品を油炒めにしたのは、変化とは違う。冷えた弁当を温めたと同じ感覚か▼コロニアのもっとも伝統のある婦人会、エスペランサ婦人会は、ほとんど創設時から料理講習会を続けてきたといわれる。半世紀である。ベテラン会員は、料理をするのに、若干の得意不得意はあるにしろ、日本食づくりの基礎をしっかりと身につけている。少なくともマヌアルどおりにはできる〃腕〃がある▼そのことは、恒例バザーの際の出品で具体的に示される。ばらつきのない揺るがない味である。例えば、桜餅、ドラ焼き、饅頭などは、材料次第では、業者が製造する市販の商品より勝っている▼初期移民の食事は、米飯、みそ汁、漬物に始まり、フェイジョンと肉が加わってきた。長い間、それが続いて、家庭によってはそれから抜け出さないところもあっただろう▼寿司を蒸して温めるのでなく、油炒めにしたのは、日本食との「縁の浅さ」を思わせる。調理する人は、おおむね「母親」の背中から学ぶ。エスペランサ婦人会のベテラン会員のような母親を持った娘、息子は、外食の日本食も積極的に食べるだろうし、家庭での手づくりにも興味を深めていくのかもしれない。(神)
2006/09/15