【エスタード・デ・サンパウロ紙十二日】政府が個人の住宅普及に向けて融資(ローン)の優遇措置を十二日に公表するのを控えて、建設関連業界は喜びに包まれ、十一日は前夜祭の様相を呈した。政府は庶民の夢であるマイホーム購入の実現と、基幹産業の一つである建設業界へのテコ入れで、失業の減少と経済成長を図るものだとして、優遇処置の実施を決定していた。このため各方面で検討されてきたことから内容については、事前に知れ渡っていた。業界ではこれにより低所得層への住宅販売が容易になったとして、喜びを表明している。
新措置の焦点は、住宅ローンの定額返済にある。金利を固定して返済額を予め据え置くもので、国内初の試みとなる。従来は不透明なインフレと流動的な高金利のために価値修正がなされ、返済者はいくらになるか分からない月賦額に戦々恐々としていた。この悪魔的要素の返済額についていけず、途中でローンを投げ出す人も多く見られた。今回の措置で生活設計が確立できることになる。
このためには低金利の資金が必要となるため、政府は金融機関に対し、住宅ローンの融資向けにプレフェレンシアル・タックス(TR=優遇金利)の適用を認めた。これも異例の措置。
住宅ローンに便宜を与えるにとどまらず、政府は建設関連業者にも融資と税制の恩典を実施する。住宅を建設する工事会社に今年一〇億レアル、来年度一五億レアルの融資を決定した。これは連邦政府の勤続年限補償基金(FGTS)と労働者支援基金(FAT)の税収から供出される。さらに四〇品目に及ぶ建築資材の工業商品税(IPI)の免除あるいは減税を発表することになっている。また中小企業には所得税などの減税を検討している。
これにともない政府は、住宅融資に向けて金融機関が購入者の所得の三〇%まで自動的に承認することと、コンサイニ―(給与の銀行振込から返済額を引き落とすもの)を義務づける暫定法発令の意向を示している。
さらにインターネットに住宅関連情報のサイトを設け、住宅価格やローン返済額に至るまでの情報が得られるシステムにするという。これにより建設会社や販売会社のお互いの競合を促進するのが狙い。
建設業界は新措置を手放しで歓迎している。大手不動産業者はこれまで中産階級以上が対象になってきたが、これにより低所得層にも普及すると喜んでいる。実際に大手四社は新措置を見込んでサンパウロ市内で1LDKおよび2LDKのマンションをそれぞれ八万七〇〇〇レアルと一四万九七〇〇レアルで売り出したところ、またたく間に八〇%が売れたという。
建築資材メーカーもIPIの免税や減税でコストが削減されることで、売上増を見込んでいる。これにより昨年対比で少なくとも一〇%の売上増になると踏んでいる。
住宅ローンに優遇措置=固定金利や減税など=建設業テコ入れで景気浮揚=庶民の夢実現へ一歩
2006年9月13日付け