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温かい気持になる読み語り=向井ひろこさん再び=今年はスライドを用意=憩の園などで交流深める

2006年9月13日付け

 「ブラジルで長年苦労されてきた一世の方々に、美しい日本語を伝えたい」。フリーアナウンサーとして活躍し、現在、国際協力機構(JICA)に勤める向井ひろこさん(兵庫県芦屋市出身)が四日、「憩の園」(中川テレーザ園長)と特別養護老人ホーム「あけぼのホーム」(岸眞司郎ホーム長)を再訪し、絵本の読み語りをおこなった。入所者は「大変温かい気持ちになりました。来年も是非来て欲しいです」と喜んでいた。
 「ブラジルと日本の架け橋になりたくて来ました」。向井さんは昨年に引き続き二度目の来伯。今回は舞台にスライドを用意して絵を映し出したほか、ムードミュージックを流して雰囲気を盛りあげた。優しく情感豊かに語る向井さんの声に、両施設とも会場に集まった入所者の多くが涙を浮かべて聞き入っていた。
 今年は兵庫県の民話である「車をおしたキツネ」や葉祥明作の「リトル・ブッタ」「母親というものは」、戦中の特攻隊員と子どもたちの交流を描いた「すみれ島」(文・今西祐行、絵・松永禎郎)などを披露。あけぼのホームでは読み語り後、入所者の想いに向井さんも感極まり涙。一人ひとりに「ありがとうございます。ずっとお元気でいて下さいね」と声をかけ、交流を深めていた。
 憩の園に入所している井垣節子さん(92)は「どれもとてもいいお話でした。日本で過ごした記憶をいっぺんに思い出しました」と笑顔で語った。また、あけぼのホームに親子で入所している鈴木みえ子さんは、顔を真っ赤にしながら「お母さん、お母さんありがとう」と涙を流していた。
 岸ホーム長も「日本語がこんなにも綺麗なものとは思わなかった。来年も是非お願いします」と話していた。
 「入所者の方々が明るく元気になってきた」と語るのはあけぼのホームにJICA青年ボランティアで赴任中の山崎由加里さん。昨年八月に向井さんが同ホームを訪れた際、読み語りの素晴らしさに気付いたという。今年から昼過ぎに毎日三十分ほど、インターネットで探した短編の物語の読み語りを続けている。
 当初、ブラジル移住百周年にあわせて来伯する予定をたてていたという向井さんだが、本音は「それまで待っていられませんでした」。昨年は兵庫県南米交流団に自費で参加し、ブラジル日系老人クラブ連合会三十周年記念式典や憩の園、あけぼのホーム、クリチーバそうじゅう会老人クラブなどで読み語りをし、大きな歓迎を受けたという。
 向井さんは一日に来伯、モジ市やロンドリーナ市などで日本語教師との合同勉強会をおこない、十六日に帰国する。