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交渉ですべては解決!=重要な仲介者の役割=障害は自身の心中にあり=中東紛争も例外でない

2006年9月6日付け

 【ヴェージャ誌一九七一号】米人類学者のウイリアム・ウリ氏が著書「国際交渉術」発刊記念のため、ブラジル人の夫人を同伴して来伯した。同氏は米政府特使として世界の紛争地帯、中東やユーゴスラビア、アフリカを飛び回った。同氏の持論によれば、グロバリゼーションとは家族会議のようなもので、初めは口から泡を吹いて議論をするが、冷却期間を置いて語り合えば、やがて合意に達するという。世界各地の紛争も、この処方せんで解決できると同氏はみている。ドーハ・ラウンドと米州自由貿易地域(FTAA)の交渉でつまづいたブラジルに、一言アドバイスするらしい。
 次はブラジルの弱肉強食社会での交渉に関する同氏のアドバイスである。
 【異質の上司と折り合いが悪く困っているときは】会社外で一席設け、上司を招待する。お茶一杯かコーヒーでもよい。理想なのは、部下が言いたいことを腹を割って話せる雰囲気にお膳立てする。会社の空気を改善する相談なのだ。上司が裃を脱いで話し合える場にすれば、上司の本音を聞くことができる。
 【具体的な改善方法は】これまで会社の組織形態は上意下達であった。それが水平方式へ移行しつつある。そのため全員が交渉のプロになること。以前は上司の命令に従っていれば、責任を追求されなかった。それが、全員が交渉のプロになることで組織形態は水平になり、全員が同時に情報と責任を共有する。
 【サルトルの地獄論が国際交渉術の基本というのは】サルトルは、地獄が人間の考えているようなものではないといった。地獄とは、人間自身の中にある。人類は遺伝学的に同一であるのに円満な人間関係が築けないのは、自分自身の中に葛藤があるからだ。自分自身との戦いが民族間の争いに発展する。
 自分を他人の立場に置いて、ものを考える能力を養う必要がある。交渉では話上手よりも聞き上手が交渉上手とされる。交渉の障害となっているのは、自分自身であることに早く気付くことが大切である。
 【生きるとは戦うこと。戦うため殺すのは何故か】戦争が人間性の一部分であると同時に、平和も人間性の一部分である。暴力的手段に訴えるのは、自分を偽る人間性から起きる。戦いの根は、人間が農耕や家畜の飼育など文化を生み出したときにある。人間が増えてくると、食糧と縄張りの奪い合いが起きた。それが一万年前だ。戦争は組織的な社会現象で、その歴史は新しい。
 【中東情勢は険悪だが、交渉で解決できるか】現在は社会構造の転換期にあるので、混乱が多いだけだ。社会構造は変化してきた。王政から始まり封建制、独裁制、そして最後に民主制。民主制は家庭や会社、政治に根付きつつある。民主制では誰もが意見を述べ、自分の意見を聞き入れて欲しいから戦うのだ。
 【平和裡に民主制を達成できないか】混乱は、交渉革命というべきもの。交渉の決定権は、上から下へ移りつつある。だから交渉能力が全員に求められる。交渉は各民族間、六〇〇〇の語族間で行われている。人類進化の一過程なのだ。
 【民族紛争の解決に第三者の助力が必要な理由】例えばイスラエルとパレスチナの紛争は、第三者である世界主要民族の代理戦争である。第三者の考え方は、古代から引き継がれた人間性の遺産で、ここに解決の鍵がある。国連が各民族の話し合いの場を作り、お互いに語り、聞くことが必要。中東問題は解決不可能というが、誰も話し合いの場を作ったことがない。
 【いかに第三者が介入すべきか】第三者の役割は多い。悪ガキ同士のケンカに、良識ある両方の親が仲裁に入ったとする。まず、雰囲気作りから始まる。それから仲介役と先生役、会話が弾む演出を行う。医師として患部を摘出し、薬を施す役目も行う。暴力的手段は回避し、平和的手段で解決のリードをする。中東紛争は国際社会が誤った介入をしたから、ことをこじらせたのだ。