【エスタード・デ・サンパウロ紙八月二十日】石油関連の大企業は、新聞や雑誌の表紙を飾る有名企業だと誰もが思っている。それ以前は、世界の原油市場を七人の男が牛耳っていると思っていた。しかし、原油を牛耳るのは、二十の公団だとエコノミスト誌が報じた。そのうちの十六公団が世界の石油埋蔵量の九〇%を管理している。
そのひとつに、ベネズエラ石油公団(PDVSA)がある。チャベス大統領は、このPDVSAをベネズエラ革命の拠点にし、一万八〇〇〇人の幹部職員を解雇した。それまでこの職員に支払っていた給料八〇億ドルを、社会福祉という名目で貧困階級へ生活扶助金として配布した。
石油を政治の道具にしたのだ。その結果、生産設備の保全は疎かになり、生産は低下した。これをマネしたのが、ボリビアのモラレス大統領である。大統領に就任すると、天然資源の国有化を宣言した。
ペトロブラスを下請け企業に格下げした。ペトロブラスが手塩をかけて築き上げた設備を接収し、YPFBの所有にした。設備の国有化リスクは、海外進出につきもので驚くことではない。ボリビアが他人のものを卑劣な方法で接収したのは,これで三度目だ。
問題は、チャベス大統領の入れ知恵でやった騙し討ち的な接収法である。接収の国際慣習は長時間かけて双方の合意を得ながら、過激な変化を避け、生産供給に支障を来たさないように行うもの。商習慣と文化が全く異なる国がシステムを移転するのだから、一朝一夕にできない。
そのボリビアの天然資源国有化計画がもう座礁した。モラレス大統領が、チャベス大統領の指導で行った国有化が初めて味わう試練である。ボリビア政府は、三項目の暫定令を制定した。今まで隠して置いて十九日に発表した。
YPFBが七月と八月、生産活動を一時停止するという。国有化を宣言したものの、接収の賠償費用、設備を動かす資金と管理技術も操作技術もないのだ。それでボリビア中央銀行へ駆け込んで、一億八〇〇〇万ドルを用立てた。これを運転資金にするらしい。
しかし、問題はカネだけではない。基金の管理と運用法が分からないのだ。YPFBは基金でロイヤリティを払ったり、下請けの受け取り分六八%を先払いしなければならない。そうなると一億八〇〇〇万ドル位では開店休業だ。
国有化を宣言したが、国有化の看板を下ろさなければならない。ペトロブラスが計画していた新規投資五〇億ドルを無にしたのだ。ボリビア政府は泥棒を捕らえて縄をなっている。下手な捕物なので、新規投資も技術移転も受け損なった。超後進国は頭の構造が超後進なのだ。
真似で誤算のボリビア=早くも座礁した資源国有化
2006年9月6日付け