【エスタード・デ・サンパウロ紙二十一日】ルーラ大統領のお株を奪ったチャベス大統領は、幻想外交に忙しい。同大統領の話を鵜呑みにすると、神話の主人公カストロ首相の後継者になるのではないかと釣り込まれる。ベネズエラは島ではなく、ブラジルと地続きの南米大陸なのだ。
チャベス大統領は最近、イランへ出かけシーア派と戦略協定を結んだ。イランが経済支援を行う国際テログループに協力を約し、イスラムの原子爆弾開発にエールサインを送った。ベトナムにも立ち寄り、資本主義は人類を破滅に導き、米国は悪魔の使者であると述べた。
同大統領は左手で二十一世紀に社会主義の時代到来を宣言し、反米主義と反資本主義に協力を求めた。右手は対米通商の拡大を図り、ベネズエラを金融王国に変貌させた。キューバやボリビアと派手な通商協定を結んだが、ベネズエラを富ましたのは米国であることを隠している。
ニューヨークタイムズは、米国の対ベネズエラ輸入が二〇〇五年、三六%増の四〇四億ドルに達し、ベスト二〇入りを報じた。〇六年の貿易は、三カ月で一一六%増の激増振り。米国の商社も見返りに、自動車や建設機器、コンピューターを大量に売り込んで大満悦だ。
チャベス大統領は、米国の商社をホワイトハウスの盲腸と呼んでいる。フィナンシアルタイムズは、チャベスのラッパとは裏腹に、米企業のベネズエラ詣でを報じた。チャベス大統領がいう南米革命とは、貧乏人や社会の敗者への詭弁らしい。
ベネズエラに現在、新しい上流階級が誕生した。カラカスの銀行がアンチーグア島のオフショーアへ巨額送金をしている。過去一年に銀行残高が二九三億ドルから三九八億ドルへ膨れ上がった。
チャベス大統領が就任した〇二年、原油価格は低迷し、ベネズエラ経済は破産状態あった。それが原油の高騰で事情が一変した。ベネズエラは好景気に沸き、一般庶民はチャベス大統領の実力と思っている。アルゼンチンのボロ債券を引き受け、亜国ではチャベス様様だ。
ルーラ大統領も顔負けのチャベス外交は、着々と資本主義打倒に向けて布石を打っている。同大統領の超現実主義は「ライバルはライバル。金儲けは別」である。ルーラ大統領には、こんな二枚舌を使う離れ業はできないのだろうか。
チャベス外交は超現実主義=ルーラ大統領に離れ業は無理?
2006年8月30日付け