ブラジル日本移民百周年記念協会の理事会にも諮られていない書籍出版事業企画書(補助金申請書)が百周年プロジェクトとして、国際協力機構(JICA)聖支所に提出されていたことが協会内部の関係書類から分かった。内容に不備があり、受理はされていない。申請金額は日本円で一千万円。著者には、渡部和夫(協会顧問)、吉岡黎明(協会総務委員長)、大原毅(文協評議員長)ら十人の名前が記されており、コーディネーターは原田清氏。百周年協会理事長としてサインしている上原幸啓氏は本紙の取材に、「よくあること。ラテン語でもこういう言葉はあるんですよ」と笑いながら答えた。協会幹部にも知らされておらず、「(独断専行は)いつものこと。何を言ってものれんに腕押し」と幹部からもため息が漏れている。
申請書によれば、仮題は日本語として少々不可解な「ブラジル日系社会における日系の貢献」となっており、各分野で活躍する日系人の貢献度を見ることがテーマとなっている。
出版は〇七年十二月を予定、七百頁で五千部(ポ語三千部、日本語、英語各千部)。
ボランティアにより執筆(ポ語)されるため、原稿料は発生しないとしながらも、翻訳代として三百九十万(日本語二百六十万、英語百三十万)を計上、出版費用(印刷、製本)として、六百万(ポ語三百五十万、日本語百三十万、英語百三十万)の計一千万円が申請金額となっている。
編著者には、渡部和夫、大原毅、二宮正人(弁護士)、山中イジドロ(農業大臣元補佐官)、原田清(弁護士)、林アンドレ(弁護士)、吉岡黎明、上田マサミ(連邦高等裁判事)、山田レナト(医師)、西田ロッケ(建築技師)ら(敬称略)十人がその名を連ね、発行元はブラジル日本移民百周年記念協会。
同協会が昨年末に募集を終えたプロジェクトにも入っていない企画がJICAに申請されていることについて、同協会の大浦文雄副総務委員長は、「全くの初耳」としながらも、「別に驚くことではない」と続ける。
「(協会内の決定事項は)いつも一部の人間だけで決めており、それを抗議、批判してものれんに腕押し」と淡々とした口調で語った。
社会福祉関係の執筆を担当するという吉岡黎明総務委員長は取材に対し、「この企画自体はプロジェクトには入っていないが、(後援事業に承認されている)出版事業(publicacao de livros)のなかの一部」との解釈を見せる。
理事会にも諮っていない申請書に理事長名でサインしたことに上原氏は、「急なときはよくあること。次回の理事会で(事後)承認してもらいます。文協でもよくやってることですよ」と平然と答えた。
「内容が明確ではないため、再度の申請をお願いしている」と話すJICA聖支所の野末雅彦次長によれば、最初の申請書には、著者の経歴、英訳の必要性、製本後の配布先にも触れておらず、見積もり書も日付もない状態だったという。
なお、申請金額もポ語出版費用三百五十万のみが記載されており、他の予算については、野末次長自らが相当金額を助言している。
「企画自体はいいので年度末調整に向け、本部に申請できれば」としながらも、「正式なものとして承認されていないとの話も聞いている」とし、協会内のコンセンサスを得ることが前提、と念を押す。
大浦副委員長は、「協会内に横のつながりはなく、言っても分からない。正直、もう副委員長を辞めたい。(四大プロジェクトの一つである)日伯学園に専念したいと思っている」とため息まじりに話した。
1000万円の企画書をJICAに提出=百周年協会=理事会無視のプロジェクト?=上原理事長「よくあること」
2006年8月26日付け