【エスタード・デ・サンパウロ紙二十日】中央銀行は十九日、報告書FOCUSで、二〇〇六年度の経済予想成長率が工業生産の落ち込みで四%は期待薄となったため、三・五%から三%へ下方修正すると発表した。高率の実質金利と農業不況、輸出の後退、債務不履行の急増などが相乗的に作用し、二〇〇六年下半期は予想に反して経済成長が低迷するという。産業界はサッカーW杯や選挙景気、基本金利の引き下げによる景気回復を期待したが、その気配すらなかったと慨嘆した。工業生産は五月から六月に一・七%下げた。テレビや電子レンジ製造業界の多くは八月に在庫整理のため休業に入った。
産業界は二〇〇六年下半期にブレーキがかかりっ放しとなるようだ。好調の上半期に較べ、下半期は基本金利引下げやW杯景気、選挙景気などによる期待を裏切るものとなりそうだ。七月から八月の国内総生産(GDP)は、政府予測の四%を霧の中に包んだ。W杯景気は、市場の盛り上がりより観戦による時間短縮損害のほうが大きかったらしい。さらに六月には州都第一コマンド(PCC)の襲撃も生産後退に追い討ちをかけた。
ブラジル代表が早々に敗退したことも、テレビの売上げを予想以下に留めた。テレビが例年の平均を上回って売れたのは、上半期だけであった。レンジ業界は八月初め、集団休暇を出したが商店の在庫は一向に減っていない。
二〇〇〇年以来順調に伸びてきた輸出も停滞し、実質的高金利とレアル高の追い打ちで、GDPの下方修正を余儀なくされている。サービス業界の対外収支もGDPに占める割合が〇・九%へと後退した。農業は三・一%から二・八%へ、工業は四・七%から四・二%へと後退した。
レアル高による輸出への影響は、一九九五年以後最悪の事態となった。GDPを支えているのは、国内市場の四・六%だ。下半期GDPの落ち込みを如実に示したのは、七月の工業生産が本来なら昨年同月比二・四%増であるべきところが〇・二%に留まったことで、不吉な兆候を見せた。
GDPを支える輸出不振は、高金利政策を続けた通貨政策委員会の失策の結果という見方が多い。政府は最低賃金を引き上げて公務員の給与を調整し、低所得者へ生活扶助金を配布したが、国内需要に効果はなかった。アジア諸国の精勤振りに較べ、ブラジルの経済成長は恥ずべき状態にある。
経済成長を停滞させた第一の理由は、高率の実質金利。基本金利が年利一四・七五%なのに、実質金利は月利で九・四%である。第二が為替政策不在による輸出の停滞。輸出振興が関連企業をけん引し、GDPを生む。第三は農業不況が、地方都市を経済的窮地に追い込んだこと。
繊維や製靴、玩具業界には、中国という強敵がいる。これら三業界は未曾有の試練に遭い、これまでのGDP維持で死闘を展開している。靴業界は前に中国製品、後は金利高による在庫高と挟み撃ちだ。ブラジルの玩具市場は四〇%が中国のシェアとなった。アパレルの老舗エーリングも、現状維持が精一杯という。中国製品はレアル高でますます攻勢の波に乗った。
予想成長率を下方修正=中銀=4%を3・5%へ=高金利、輸出後退など影響=工業生産に陰り見え出す
2006年8月22日付け