【エスタード・デ・サンパウロ紙十八日】ブラジル銀行連盟(Febraban)のトロステル経理主任は十七日、マンテガ財務相が市場金利の引き下げを示唆した暫定令を政治的駆け引きと位置付け、銀行金利の引き下げにはならないと批判した。銀行連盟は、同主任に連盟の意向ととれる発言を禁じたため、連盟の公式声明ではないことを同氏は文書で発表。財務相は、同主任の発言が時機を得ず、立場をわきまえない突飛なものだと遺憾の意を表した。銀行のスプレッド(金利差)取引は政府の内外で厳しい批判を受けており、同取引の最高責任者である同主任の独走が波紋を呼びそうだ。
暫定令は、経済成長の行き詰まりで銀行を悪玉に仕立てる政府の策略だと同経理主任はいう。政府の目的が本当に市場金利の引き下げにあるなら、ガラス張りでクレジットについて議論をする用意があると財務相発言に挑んだ。同主任によれば、中央銀行はスプレッド金利と市場金利を故意に歪曲しているという。
中銀は、銀行が行っている融資システムを計算に入れていないという。銀行は融資の三分の一を農業融資と住宅、輸出、社会経済開発銀行(BNDES)負担金に充当することを義務付けられている。財務省はこの点で銀行の事情に配慮していない。不明瞭な数々の税金や強制預託金などを低減すべきというのだ。
円滑な通貨政策を実施するために、かくも過大な預託金を強制する必要があるのか、納得いくように説明して欲しいと同主任は訴えた。銀行連盟は、主任が個人のうっ憤を晴らしたと言い訳した。暫定令の趣旨はもっともだが、強制預託金が重圧だから軽減し、銀行への行政介入も程ほどにしてくれと連盟はいう。
金融関係者らは異口同音に、財務相発言の暫定令は今一つで市場金利の引き下げにはならないと声を上げている。銀行の優良取引者リストは既に法令を制定済みだ。他の項目は、クレジットのコスト削減に役立たない。金利引下げで最大の障害は、裁判速度を加減し、金利を策動する特権を持つ裁判所にあるという。
銀行連盟と財務省の間で交わされた論戦の中で、現実は想像より複雑であることが次の三点で判明した。第一はトロステル主任の口封じで、銀行が国民の攻撃を避けたこと。第二は銀行連盟の出方が納得行かないこと。第三は財務相と中銀総裁が一国民の抗議に反応したことが不自然。
金融市場の銀行カルテルは世界共通とはいえ、クレジットの高コストが問題になるのは必然とみられていた。経理主任が銀行連盟の公式代表ではなく自称代表として時の声を挙げ、一人敵陣に突入して来たことを、財務相は知っていたはずだ。これはスプレッド取引で銀行が国民から袋叩きにされる前に、奇襲攻撃を駆けたといえそうだ。
財務相は、暫定令が未公表なのに、内容も見ずに欠陥法だと断定する頭の構造が不可解だと述べた。銀行連盟は財務相に謝意を表し、スプレッド取引のけん制に勤め、政府方針への協力を約したという。中銀は毎月、スプレッド取引状況と通貨審議会の議事録を、マスコミを通じて報告する。それが不透明な歪曲報道だと批判され、傷ついたようだ。
銀行連盟主任が暫定令批判=政府の策略だと=金利低下につながらない=問題は高い融資コスト
2006年8月19日付け