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中国に水をあけられた伯=ネックは政治改革と経済戦略

ニッケイ新聞 2006年8月16日付け

 【フォーリャ・デ・サンパウロ紙三十日】中国の台頭により、ブラジルが退歩しているものが二つある。第一は経営環境を整備するための政治改革。中国は三十年間、二桁の経済成長を続けている。何故かブラジルにはそれが出来ない。第二はチャンスをつかむ経済戦略である。
 政治改革は、昔から掛け声だけでいっこうに実行されない。ブラジルは、なぜ日本や韓国、台湾などのように政治改革ができないのか。答えは種類の違う動物で、地上に発生した時期が違うらしいというのだ。しかし、後発の中国のように、なぜブラジルは経済成長ができないのか。
 ブラジルの経済学者は、未だに中国の発展を参考にした解決策を見出せないでいる。中国の経済戦略は、輸出優先と貯蓄奨励である。経済安定のマクロ政策は、英才教育と技術開発である。しかし、発展の秘密をさらに詳細に調べると、超現実主義と国家総動員令にたどり着く。
 中国が市場開放主義に方向転換したのは一九七八年。それ以後官民を挙げて脱兎のごとく経済発展に取組んだ。しかし、中国の政治手法が永続するかどうかは微妙なところだ。中国政治の是非は、ブラジル社会が希望するところと違うので結論は出せないとブラジルの学者らはいう。
 中国経済の発展を覗くと、高度の情報と的を射た経済分析があり、国民を納得させる。国民にとっての損益をよく計算し、行政指導が徹底している。行政のある部分は専横的である。行政が正解なら幸運だが、危険も伴う。異論を唱えると拘束される。
 ブラジルの体験に照合すると、中国の政治方式は効果が少なく、社会が支払う代価は大きい。中国の経済発展は素晴らしいが、学ぶものは少ない。
 ブラジルが中国に学ぶならば、海外貿易とクレジット、教育、科学技術を促進するメカニズムの設定である。中国に打ち勝つカラクリはない。いままでブラジルが行ったこと、経済の安定や的確な法整備、有効な公共経費、教育の充実、技術開発、インフラ整備をさらに高度化し、能率化するだけである。
 ブラジルを変えるべきものは、時間の観念だ。ブラジルは自然条件が揃っているのに中国に対抗できないのは、与えられた時間を有効に活用しないからだ。それから外交政策も、中国に先手を取られている。北半球の友好国などとタカをくくっていると、生き馬の目を抜かれる。イデオロギーの共通点など、何の役にも立たない。
 中国は、工業の負い目を通商政策で補っている。中国は対欧米輸出を最優先して市場拡大を図り、ブラジルのお坊ちゃん方式を退けている。中国にとってラテンアメリカは、米市場の付録に過ぎないのだ。
 何故ブラジルは、人件費が高いか。ブラジルが輸入代替政策を採ったころ、企業と労働者は南東部に集中した。この時点で南東部の賃金は北東部の二倍、中国の四倍になった。企業は慌てて安価な手間と税制恩典を求め、北東部へ進出したが中国の比ではなかった。