ニッケイ新聞 2006年8月15日付け
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙十三日】調査会社のダッタフォーリャは十二日、ブラジル人有権者の四七%が保守派意識を持つと発表した。中道派と答えたのは二三%、革新派は三〇%。保守派と答えた人の五三%は、アウキミン前サンパウロ州知事(ブラジル民主社会党=PSDB)が次期大統領にふさわしいと答えた。続いてルーラ大統領(労働者党=PT)は四七%、エレーナ上議(自由社会党=PSOL)は三九%。イタウ銀行初代頭取のオラーヴォ・セットゥバル氏は、ルーラ大統領もアウキミン前知事も保守派であり、どこも違わないと述べた。専門家によると、保守と革新の特徴が明白でないので、保守多数といっても驚きではないと述べた。
調査は、全国の有権者六九六九人に対して行われた。ブラジル人の政治的プロフィールは、保守派意識が強いらしい。半数をわずかに切るが、自分では保守派を自称し、妊娠中絶や大麻吸引に反対、犯罪撲滅のため未成年の刑事責任や死刑などを要求している。
全般には若年層のほうが保守的で、高齢層が革新的であった。刑事責任を現行の一八歳から一六歳に下げるべきと答えたのは、中道派が九〇%、革新派が八七%、保守派が八五%であった。全般に大多数が賛意を表したが、革新派の八七%は意外であった。
現行法は、妊娠中絶を婦女暴行と母体に危険が伴う場合にのみ許可している。これに対し、全面許可を望むは中道派二〇%、革新派一九%、保守派一七%。一七%の内訳は大学卒が三〇%、最低賃金の十倍以上の所得者が三四%であった。
調査結果について政治科学学者のレオニシオ・ロドリゲス氏は、有権者の多くが保守と革新を明確に判別できず、現状維持を保守と思っていると評した。ブラジル文化は変化を避ける傾向があるため、一般の人は安易な道を求める。例えば刑事責任年齢を引き下げ、面倒なことを回避する。
前政権の治安担当官ワウテル・マイエロヴィッチ氏は、有権者の多くが保守と革新について学ぶ機会がなかったという。有識者は社会問題に対処する個人的見識がなく、米国などの風潮に付和雷同するのが保守的で慎重な考えとする傾向があったと述べた。
ブラジリア大学のデイヴィッド・フライシャー米教授は、米国の習慣と同様にブラジルでもテレビが教養源となり、無意識のうちに保守思想で洗脳された。人々はテレビによって考えることを止め、鵜呑みにするようになったという。
ミナス・ジェライス連邦大哲学科のビニョット教授は、ブラジル社会は泰平の眠りから起されて不快な気分でいると調査結果をみている。因襲と汚職文化に有権者は困惑した。革新派の出現は希望の星であったはずだが、四七%保守派という数字は期待外れで、対決の意欲も気力もない中途半端なことを意味するという。
ルーラとアウキミン、エレーナの三候補に賛否両論で拮抗する中絶と大麻、死刑、刑事責任年齢の引き下げについて質問した。アウキミン候補だけが回答。中絶は倫理問題、他は反対。他の二候補は回答を避けた。大統領はPTの文書で、調査結果は社会が治安問題を曲解した表れだとする声明を発表した。