ゾルゲと共にスパイだった尾崎秀実は死刑になり今に語り継がれるが、日本は昔から情報(諜報)戦争の舞台になってきた。それなのに日本の情報活動は弱く、あの戦争でも真珠湾攻撃の暗号文がアメリカに解読されていたの話もあるし、現在でも最大の弱点だとされる。今も「スパイ防止法」はなく、野放しになっているのが現状なのである▼そんなところへ海自の一等海曹が内部情報を中国へ流したのではないかの疑いで長崎県警が捜査を始めた。潜水艦の機密らしい。けれども、1曹は否定しているし詳細は不明ながら事実の究明を急ぐべきは当然である。しかも、1曹は、昨年1月に訪中しあの自殺した上海の総領事館員が通っていたカラオケ店勤務の女性と関係し、自衛隊には無断で今年の3月まで8回も上海を訪れている。そのうえ―日本から350万円も送金してもいる▼縊死した領事は電信官で中国の諜報部から脅かされ情報を流していた。その原因は先のカラオケ店の女性であり、この二人の深い関係が引き金だった。所謂―ハニー・トラップ(女性スキャンダルを仕立て国家機密の漏洩を迫る)なのだが―電信官は「一生あの中国人達に国を売って苦しまされることを考えると、こういう形しかありませんでした」の遺書を総領事宛に残した▼この総領事は杉本信行氏なのだが、3日に肺がんで死去した。電信官の死から少し後に帰国したところ、がんと宣告されたのだが、これから「大地の咆哮」を上梓し中国を痛烈に批判するという硬骨の外交官である。海自1曹もハニ―・トラップの被害者でなければいいのだが―。(遯)
2006/08/05