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JICA青年ボランティア リレーエッセイ=最前線から=連載(53)=竹村雅義=南マットグロッソ州日伯文化連合会=オーパ!ブラジルの中のニッポン

2006年8月3日(木)

 ブラジルの中西部、南マットグロッソ州ドウラードス市が、私の赴任先だ。毎朝、広大な地平線に昇る朝日が顔を出すと、思いっきり深呼吸する。
 「空気がじつにウマイ!」。周りは、青々とした牧草地や大豆畑が広がる。初めて、この地に着いたとき、その道すがらの風景にずっと圧倒されていた。家がない!どこまでいっても草原が広がり、赤いテール・ロッシャの大地が続く。
 その上、道はひたすらまっすぐ続いている。ほんとに、ここは人が住んでいるんだろうか…。そんな不安を抱えながら私のブラジル生活が始まった。毎日がオーパ!の連続だった。ポルトガル語もできず、買い物をするのも、道を歩くのさえ一苦労だった。
 そんな私を温かく迎え入れ、色々と世話をして頂いたのが、日系社会の皆さんだった。
 恥ずかしいことだが、私は日本にいるとき、日本人移民のことはほとんど知らなかった。ここに来て思ったことは、日系人の皆さんがほんとに日本を大切に思っているんだな、ということだった。日本人としての礼儀正しさ、思いやり、生活習慣、そして日本語。
 私達、日本人がすでに過去のものとして置き去りにしてきたことを、三、四世の子供達に伝えていこうと頑張っている。
 確かに今、世代交代が進み、子供達の日本語への関心が薄れてきていることは事実だが、日本語学校で学ぶことの意味はそれだけではないと思う。「うちの子は日本語学校に、ずいぶん長く通っているけど、ちっとも日本語が上手にならなくて…」とこぼす声も聞く。でも、ちょっと待ってほしい。
 結果をすぐ求めがちだが、小さな一粒の種が、いずれ芽をだし、たくましい若木に育っていくように、今はそのための大切な時間だと私は思う。
 今日も日本語学校に子供達の楽しそうな声が響く。ここの子供達はブラジル流だけにいつも日本語の授業には、笑いが絶えない。その明るさが私を救ってくれる。ほんとにここに来て良かったな、と思う瞬間だ。今日も、きっとビールがウマイ!
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【職種】日本語教育
【出身地】山形県山形市
【年齢】51歳
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 今回から「最前線から」拡大版としてシニアボランティアによるエッセイの掲載も開始します。ご期待ください。