【エスタード・デ・サンパウロ紙二十五日】メルコスル首脳会議が七月二十一日、亜国コルドバ市で開催された。メルコスルは二〇〇六年上半期、受難の年で大揺れに揺れた。ルーベンス・バルボーザ元駐米大使が、ベネズエラの加盟で政治の場と化したメルコスルを次のように評価した。亜国のセーフガード(緊急輸入制限)でウルグアイとパラグアイが翻弄され、鶏小屋のようなメルコスルは、政治的な思惑で招いたベネズエラの加盟でさらに騒がしくなる。メルコスルは発展が最も期待された時期に目ぼしい成果がないため、政治力不足を認めたところだった。
チャベス大統領は、ブラジルを除くメルコスル加盟国へ資金のテコ入れを行って加盟国を手なずけた。同大統領の先見力といえそうだ。キューバのカストロ首相も、メルコスルを優先貿易相手国として関税協定に加わった。
第三〇回メルコスル首脳会議の目的は、経済の上に政治を据えたメルコスルの政治力強化にあったようだ。特にカストロ首相の出席は、メルコスルの政治色を強めたことを示唆した。チャベス大統領はメルコスルの再出発といったが、狙いは政治介入である。
世界の歴史が変わるとチャベス大統領が宣言。同元大使が「歴史が変わる」という表現は、メルコスルの精神を変えると解した。これまでの伯亜枢軸は、カラカス・ブエノス枢軸に変換し、メルコスル公債を発行するらしい。
その結果亜・べネズエラ両国は、すぐにボリビアの加盟とメガガス・パイプラインの架設などを提案する。メルコスル連合軍の創設、民主主義の政治顧問団設立、メルコスル人権団体の創設、メルコスル銀行の設立、メルコスル旗のデザインを変更などだ。
さらに他方でベネズエラ・プロジェクト総局を設け、メルコスル発展の進行状況をアピールする。国連安保理への候補国支援を行う。米州自由貿易地域(FTAA)構想を排して大西洋自由貿易市場(ALBA)を立ち上げ、対米対抗意識を発揚する。
メルコスルに不満を抱いて米国に対し、突破口を模索していたウルグアイやパラグアイらの独走を禁じる条項を設ける。ブロック以外の国との通商条約の締結は九〇年代、ブラジルが阻止し、メルコスル共通通貨の発行により資金調達をブロック内で行い、金融経費を低減する考えであった。
ベネズエラの加盟でパラグアイ政府は、メルコスルが政治的に二元化され、イデオロギーとドグマが激突するとみている。アモリン外相は当初、ベネズエラの加盟を歓迎したが、チャベス大統領に会って頭痛のタネだと気付いた。
ルーラ大統領は、メルコスルは母親の心のようだという。いつでももう一人受け入れることができると、ベネズエラ加盟を歓迎した。この一人には、ボリビアやキューバ、メキシコ、その他も含んでいる。
メルコスルの再出発で世界の経済地図を塗り替えるつもりだが、政治地図を塗り替えるだけに終わりそうだ。そこから生じる意見の相違は、ブラジルに経済的代価を払わせることになる。メルコスルが生き残れるのは、政治的期待ではなく経済的期待からだ。経済的に得るものがないなら、政治的に広大な夢を描いても早晩メルコスルは崩壊すると元大使が懸念する。
政治色強めるメルコスル=ベネズエラ加盟で=「世界の歴史は変わる」のか=経済的利益なければ崩壊
2006年8月2日付け