コラム
知人の見送りで久しぶりにクンビッカ空港へ。訪日する人がよく利用する便だ。これまでにも見ているように、別れを惜しむ人たちがいる。
そこにその老夫婦はいた。子や孫だろうか、五、六人とともに。男性は車いすを使っていた。
家族が日本に行くのかな。旅行か、デカセギか、ぼんやり考えていると、老夫婦だけが入口へ向かうので少し驚いた。
小柄な二人はどちらも八十代半ば位に見えた。一世だろうか、日焼けした顔には深いしわが刻まれている。静かに佇む男性と、丁寧にあいさつを交わす夫人。涙ぐむ見送りの女性。もしかしたら渡伯後初めて日本へ里帰りするのだろうか。そんな雰囲気が漂っていた。
考えすぎか。先日取材で、日本の戸籍が消えて訪日できない女性と話したばかりだったからかもしれない。その日は、見慣れた空港の風景が少し違って見えた。(ま)
2006/08/02
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