2006年7月29日付け
「おっとん、おっかん、仇は取るけえね」。移民の恨みを抱え、元官僚を誘拐、外務省を襲撃――。ブラジル日系二世が日本の移民政策の非を追及、復讐を果たす衝撃的な内容と独自の筆致で、二〇〇四年に三つの文学賞を獲得した垣根涼介氏のサスペンス小説「ワイルド・ソウル」(幻冬舎)の映画化が今月二十五日、映画の配給・製作や音楽、出版事業などを手がける「ギャガ・コミュニケーションズ」から発表された。スポーツ報知が報じたもので、ブラジル日本移民百周年を迎える二〇〇八年の公開を目指している。アマゾンロケも予定されており、話題を呼びそうだ。
一九六一年、衛藤一家は、アマゾンの大地に降り立った。夢の楽園を信じて疑わなかったブラジルへの移住―しかし、それは想像を絶する地獄の始まりだった。逃げ出す場もないジャングルで獣に等しい生活を強いられ、ある者は病に息絶え、ある者は逃散して野垂れ死に…。
それがすべて日本政府の愚政―戦後の食糧難を回避する《棄民政策》によるものだと知ったとき、すでに衛藤の人生は閉ざされていた。それから四十数年後、衛藤の息子を含む三人の男が日本政府に復讐。外務省ビルにマシンガンを撃ち込むラストシーンは描かれるのか――。
原作者の垣根氏は二〇〇二年にブラジルを訪問。その後出版された同書は、衝撃的な内容と独自の筆致で、第六回大藪春彦賞、第二十五回吉川英治文学新人賞、第五十七回日本推理作家協会賞の三冠に輝き話題をさらった。
同紙の報道によれば、「製作費は十億円以上。ギャガ最大の勝負作」。近日中に監督が決まる予定で、順次キャストを固め、クランクインは来年後半。アマゾンロケも予定されているという。
このたび発表された「ワイルド・ソウル」の映画化。ブラジルではすでに、臣道聯盟を描いたフェルナンド・モラエスの著書『コラソンイス・スージョス』を原作に、セルソ・アモリン外相の息子である新進気鋭の映画監督ヴィセンチ・アモリンがメガホンをとり映画化されることが決まっている。百周年に向け銀幕の裏側も過熱してきたといえそうだ。